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ポルシェ・ボクスター S


  ポルシェ・ボクスターが、大きく生まれ変わった。昨年、911シリーズに施されたエンジンの直噴化と「PDK」トランスミッション採用の波が、ボクスターシリーズにも及んで来たのだ。強力版であるボクスターSに、イタリアのシチリア島で乗ってきたので、 さっそく、その結果を報告したい。


  いつものポルシェのモデル&マイナーチェンジの通り、外観上の変化は小さく抑えられている。テールライトの形状が変更され、新たにLEDによるポジションライトとフォグランプが組み込まれ、オプショナルでLEDデイタイミングランニングライトを選ぶことができるようになった。

  ボクスターSのエンジンはガソリン直噴化され、15馬力増加し、310馬力へ。馬力荷重は、4.4kg/馬力と一層強力に。ボクスターのそれは直噴化はされない代わり排気量が2.9リッターに拡大され、10馬力増加して255馬力。

  Sの0-100km/h加速タイムは、5.2秒と向上。新エンジンは、ボクスターSをワンランク上級のスポーツカーへと押し上げた。



  素早い変速とイージードライブを可能にするPDKは、ボクスターSの魅力の幅をさらに拡げた。キャンバスルーフを開け、風に当たりながらリラックスして走る時から、ワインディングロードをハイペースでスポーツドライブする時までのスポーツカーの楽しみを、PDKは充実させている。

  60km/hまでなら走りながら行え、所要時間11秒というルーフ開閉の万能ぶりは、ボクスターのもうひとつの長所だ。ほぼいつでも、どこでも2種類のボディを楽しむことができるところは素晴らしい。

  911の弟分としてデビューしたボクスターはモデルチェンジを重ね、ボクスターSを加えてラインナップを拡充した。Sは直噴化された新エンジンと無敵のPDKトランスミッションを搭載し、もはや弟と呼ぶには立派すぎるほどに成長した。ミッドシップエンジンによる軽快なハンドリングと素早いコンバーチブルを備えたボクスターシリーズは、兄貴911とは異なるキャラクターを備えた、魅力的なスポーツカーシリーズに成長した。

ポルシェ・ボクスター S PHOTO GALLERY
モータリングライター 1961年東京生まれ。自動車と自動車にかかわる人間についての雑誌記事や単行本を執筆している。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。ここ数年、外国を長距離クルマで走ることが続いている。2003年には、東京からロシア・ウラジオストクを経由してポルトガル・ロカ岬まで自らのトヨタ・カルディナでユーラシア大陸を横断。2006年には、ダイムラー・クライスラーのイベント『パリ~北京』に参加し、ロシア・エカテリンブルクから北京までメルセデスベンツE320CDIで走破。2007年に引き続き、今年も、『トランスシベリア2008』に出場し、総合10位、クラス9位で完走した。
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