ロータスというイギリスのスポーツカーを、ご存知だろうか?
過去に何度もF1のチャンピオンシップを獲得したこともあるスポーツカーメーカーの名門だ。1950年代の創業から、時代毎に傑作スポーツカーを生み出して来た。
最近の代表作は「エリーゼ」だ。アルミ製シャシー(車体)は軽量かつ剛性が高く、柔軟に動くサスペンションとともに、どんなコーナーでもドライバーに操る楽しみを与えてくれている。
そのエリーゼの発展版として登場したのが「エヴォラ」だ。EvolutionとVogueとAuraの頭文字を組み合わせたエヴォラは、ミニマムのリアシートを備える2プラス2のシートレイアウトを持つ。トヨタ製の3.5リッターV6エンジンを車体中央に搭載し、6速マニュアルトランスミッションを装備している。
エリーゼが、サーキットや山道で運転することだけを追求したピュアなスポーツカーであるのに対し、エヴォラはそれよりもやや幅を持たせたクルマだ。エリーゼよりホイールベースを275ミリ伸ばし、小さいながらもリアシートを備え、実用性を高めている。エリーゼの特徴であった120ミリもの幅を持つ太いサイドシルも、乗り降りがしやすいように20ミリ狭められた。
エヴォラは、現在のロータスのラインナップの中では最も乗用車寄りのクルマとして企画されているが、そこはロータス。サーキットで走らせると、精彩を放ちっ放しだった。正確なステアリング、荷重の分だけキチッと沈み込むサスペンション、明確なブレーキ、剛性の高いボディ等々、スポーツドライビングのことを第一義に考えて作られていることがサーキットや山道を走ると、即座にわかる。ガソリンが空になるまで、いつまでも走り続けたくなった。
走りっ振りの素晴らしさに併せて、もうひとつエヴォラの魅力となっているのがエクステリアとインテリアのデザインだ。エクステリアは、リアシートを持つのにもかかわらず妙に間延びしたようには見えず、独特の造形美を発揮している。インテリアはメーターパネルの数字のフォントからして新しいセンスのもので、モダンな雰囲気に溢れている。
エヴォラでサーキットや山道を運転すると、自らの視神経と身体を用いてゲームあるいはスポーツを行っているような知的興奮が得られる。電子制御に頼らない、真のスポーツカーだ。製図用のシャープペンシルに“H”の芯を入れて、細密な図面や絵を描いている感じがした。