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本家が逆襲に出た。【ポルシェ911】


  ポルシェ911に、ビッグマイナーチェンジが施された。


  改良の最も大きなポイントは「PDK」(ポルシェ・ドュップル・クップルング)の装着だ。PDKとは、ポルシェ流のダブルクラッチシステムのことだ。

ポルシェ911  ダブルクラッチシステムを「DSG」として商品化したのは、フォルクスワーゲンとアウディが初めてだった。その後、三菱ランサー・エヴォリューションや日産GT-Rなども原理は踏襲しつつ、独自のアレンジを施したダブルクラッチシステムを装備してきた。

  しかし、このダブルクラッチシステムを初めて実用化したのは、1982年のグループCレーシングカー「ポルシェ956」だった。通常のマニュアルトランスミッションよりも素早く、トルクコンバータータイプのオートマチックトランスミッションのようなトルクのロスもなく、自動的に変速できるダブルクラッチシステムは、“夢のトランスミッション”だった。アウディやフォルクスワーゲンのDSGも素晴らしかったが、驚かされたのはGT-Rだ。変速の速さとショックの少なさはDSGの比ではなく、特にシフトアップの素早さは筆舌に尽くし難かった。較べられるのはF1マシンだけではないかというくらいのクイックぶりだ。

  だが、新しい911が装備するPDKはGT-Rのそれを上回っている。さらに速く、さらにスムーズなのだ。特筆したいのは、PDKはハードブレーキング時に、クルマがそれを判断して自動的にシフトダウンすることだ。トランスミッションが頭脳を持ったようなものだ。

ポルシェ911  ディナーの席で、ポルシェのエンジニアは謙遜していた。

  「日産GT-Rは素晴らしい。とても、かなわない。GT-Rに対抗できるのは、我々の次の911ターボです」

  控え目な発言のように受け止められるが、よく聞いてみれば、「次期型911では容赦しませんよ」という宣戦布告に受け取れる。

  PDKの他に、新しい911はエンジンをガソリン直噴化してきた。高性能と同時に、エコ性能も売り物にしてきたわけだ。今度の911には、どこにもスキがない。危うし! GT-R。続きは、乞うご期待。


ポルシェ911
モータリングライター 1961年東京生まれ。自動車と自動車にかかわる人間についての雑誌記事や単行本を執筆している。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。ここ数年、外国を長距離クルマで走ることが続いている。2003年には、東京からロシア・ウラジオストクを経由してポルトガル・ロカ岬まで自らのトヨタ・カルディナでユーラシア大陸を横断。2006年には、ダイムラー・クライスラーのイベント『パリ~北京』に参加し、ロシア・エカテリンブルクから北京までメルセデスベンツE320CDIで走破。2007年に引き続き、今年も、『トランスシベリア2008』に出場し、総合10位、クラス9位で完走した。
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