2002年に発表以来、世界中で200万台以上を販売してきたシトロエンC3がフルモデルチェンジをした。
C3といえば、コロンッとした外見が特徴の小型車だ。新型もシルエットはコロンッとしているが、ヘッドライトやテールライトの形状が改められ、前後フェンダーのプレスラインなども明瞭に入り、ずいぶんと印象が変わった。
変わったと言えば、来年、日本に導入されるすべてのC3に装備されるのが、「ゼニスウインドウ」と呼ばれるフロントガラスだ。ふつう、フロントウインドウといえば屋根までのものだが、新しいC3はフロントウインドウがそこで終わらないで、ずうっと後ろまで続いている。ちょうど、ドライバーと助手席乗員の頭の上くらいまでガラスが来ている。
スライディングルーフやガラスルーフと違って、フロントガラスが途切れなく続いているので、乗り込んで走ってみると、驚くほどの開放感だ。外が曇っていても、車内は明るい。視界も広がっている。
明るいだけでなく、これなら雨の日のドライブが楽しくなるだろう。車内を明るくしてくれる上に、ガラスに当たる雨の雫の音が運転の伴奏までしてくれる。夏に陽光が強くなっても、幅一杯のシェードを引き出せば、頭上が覆われるから心配は要らない。
自然吸気1.6リッター4気筒エンジンは、4速ATと組み合わされる。小気味よく回転するのは新開発ならではだ。ATが4速というのがライバルたちに見劣りするところだが、5速と6速のクラッチレスMTが追加されるとコンファレンスで発表されていたから、そちらを選ぶという手もある。
でも、新型C3の最大の美点は、もっと他にある。それは、シトロエンらしい、柔らかな乗り心地に変わったということだ。旧型は、特別にシトロエンらしいとも思えない、キャラクターの薄い乗り心地だった。他のシトロエンの乗り心地からは、C3だけ外れていた。しかし、新型は兄貴分のC4やC5、さらには最上級のC6の延長線上にある癒し系だ。
段差や突起、舗装の変わり目などを柔らかく乗り越え、平坦路面ではフンワリと包み込んでくれる。ハンドルを切った際のロール(横方向の傾き)は大きいが、傾く速度がジンワリと緩やかで、戻る速度もそれに呼応しているので、ロールが嫌でなくなる。むしろ、ロールに身を委ねるのが心地良くなってしまう。ドイツ車や日本車とは対照的だ。
昔からのシトロエンファンも、縁のなかった人も新型C3は要チェック。“単にボディが小さいだけ”の小型車ではなく、シトロエンに乗る楽しみに彩られている。