昨年から今年に掛けて、ポルシェは急速な勢いでエンジンとトランスミッションのアップデートを進めている。
昨年は、カイエンのV6とV8(自然吸気とターボ過給)エンジンをガソリン直噴化した。ガソリン直噴は、省燃費と排ガスのクリーン化、パワーアップを可能にする、いいこと尽くめの技術だが、そのためには精密な電子制御と良質なガソリンが必要となる。
今年は、5月から一ヶ月おきのペースで911の水平対向6気筒エンジンが直噴化された。新型91カレラ2とカレラ2Sの、クーペとカブリオレのインプレッションは試乗直後にアップしたが、それは実に素晴らしいものだった。
フルモデルチェンジと呼んでも差し支えないほど911の魅力を倍増させたのは、「PDK」というトランスミッションを採用したことにもよる。PDKは「ポルシェ・ドッペル・クップルング」の略称で、いわゆるツインクラッチ・システムを持つ2ペダルマニュアルトランスミッションだ。日産GT-R、三菱ランサー・エヴォリューション、BMW・M3、アウディとフォルクスワーゲン各車が同じ原理のものを採用している。一般的な3ペダル式のマニュアルトランスミッションで人間の手と脚で変速するよりも絶対に速く変速でき、ショックが皆無で、燃費も良い。75万円というオプショナル価格以外は、こちらも、いいこと尽くめ。
ガソリン直噴エンジンとPDKは、911カレラ2、カレラ4と順次切り替えられ、最後にタルガ4/4Sにも装備され、911シリーズが完成した。
日本ではタルガの人気は今ひとつだが、生産の約一割を占めるほど諸外国では立派に911シリーズの一翼を担っている。ちなみに、カブリオレが5割で、クーペが4割を占めているそうだ。
タルガの真骨頂は、ガラス張りのキャビンにある。悪天候や冬の寒い時でも、キャビンは明るい。広大なスライディングルーフを開けて走っても、風がキャビンに入り込むことなく、開けていることを忘れてしまうほど驚異的に静かだ。また、タルガはテールゲートを持つ唯一の911だから、リアシートへの荷物を出し入れしやすく実用性にも秀でている。独自のデザインも、存在感がある。
僕らは、もっとタルガの魅力に気付いた方がいい。タルガ4/4Sは、“通”が選ぶ911だ。