ローバーから引き継いで、BMWがMINIを作るようになって、もう9年にもなる。
最初は2ドアハッチバックのMINIとMINIクーパーから始まり、コンバーチブルがラインナップに加わり、ステーションワゴンの「クラブマン」が追加された。それらに加えられたのが、最強力版の「JCW」(John Cooper Works)である。
ジョン・クーパーとは、1950年代から60年代に掛けて活躍したイギリスのレーシングドライバーのことで、最後は自ら設計製造したF1マシンでチャンピオンを獲得した伝説的な人物だ。
クーパーの活躍はF1だけに留まることなく、ラリーやツーリングカーレースでも輝かしい戦績を残している。そのひとつが、「ミニ・クーパー」だ。オリジナル・ミニをチューニングし、世界中のモータースポーツを席巻し、「ミニ・クーパー」は当時、ミニを作っていたBMC社のカタログモデルにまでなった。そのブランドイメージと車名が、現在のBMW製MINIにまで受け継がれているのである。
オリジナル・ミニにもステーションワゴンのクラブマンは存在していたが、JCWなどというモデルはなかった。JCWは、スタンダードのクラブマンのハイパワー&スポーティ版である。走らせても、それがすぐにわかる。
伸び伸びと加速し、ハンドルやスロットルワークなどに応じたクルマの動き方が、キビキビとしているのだ。クラブマンはワゴンだからスタンダードのMINIよりもホイールベースが伸ばされていて、キビキビ感は弱いが、それでも同じくらいのサイズの、他のクルマよりは機敏な走りっぷりだ。
クラブマンやMINIを買ってから、このキビキビした走りっぷりに気付かされた人はちょっと驚くと同時に、MINIというクルマのキャラクターを強く意識することになるだろう。
そして、良く言えばキャラクター、悪く言ってしまうと癖となるのが、山道でのハンドリングだ。アップダウンとコーナーが連続する山道でペースを保ちながら走り続けていると、MINIらしい前輪駆動の癖を残したハンドリングが顔を覗かせてくる。
ハンドルの切れ角を頭に入れないで、無闇にスロットルペダルを踏み込んでいると、タイヤはスキール音を発し、グリップを失い始め、狙った走行ラインの外へ外へとハミ出し始める。加減速はなるべくタイヤが直進かそれに近い角度の時に行う、という基本が要求される。この辺りは、オリジナル・ミニのキャラクターを受け継いでおり、昔っぽくも感じる。
インテリアもオリジナルの雰囲気をうまく残しながら、モダナイズしている。オリジナルを知る人も知らない人も、MINIクラブマンというキャラクターを楽しむことができるだろう。JCWだから、走りっぷりも申し分ない。