フォルクスワーゲンが先鞭を付け、初めて製品化した「エンジンのダウンサイジング化」の波が、メルセデスベンツにも及んできた。
ダウンサイジング化とは、エンジン排気量を下げることで燃費を向上させ、CO2排出量を削減することを狙いとしている。しかし、ただ排気量を下げるだけでは出力が足りなくなってしまうので、不足分をターボチャージャーやスーパーチャージャーで過給して補う。
そして、ダウンサイジング化は、ガソリンのシリンダー内への直接噴射と組み合わせることで、より大きな効果を生み出している。フォルクスワーゲンもBMWも、ガソリン直噴と過給を組み合わせ、排気量を小さくしている。
燃料の直接噴射はディーゼルエンジンでは常識だったし、過給だって今まで盛んに行われてきた。どちらも既存の技術で、特別な目新しさはない。しかし、ふたつを組み合わせ、そこに精密な制御を施すことによって初めて効率が向上し、燃費向上とCO2削減をなしとげながら、同時に相反する出力向上を実現できた。もちろん、噴射ポンプの飛躍的な精度向上など、周辺技術の進化なくしては、ダウンサイジング化は実現不可能だった。
メルセデスベンツがダウンサイジングを行ったのは、EクラスとCクラス。Eクラスは、セダンとクーペの両方。3車種とも、同じ1.8リッター4気筒ガソリン直噴ターボエンジンを搭載。最高出力は204馬力、最大トルクは310Nm。先代E250に搭載されていた2.5リッターV型6気筒と同等の出力、26%増しのトルクを発生し、それでいながら燃費は27%も低減させている。
数値に偽りはなく、走り出して感じるのは過不足のないパワーによる加速だ。たった1.8リッター4気筒とは、にわかには信じられない。ガソリン直噴は圧縮比を下げずに済むから、ターボ過給と組み合わせてもスロットルレスポンスが悪化することもなく、自然なフィーリングだ。ガソリン直噴プラス過給エンジンは、まったくいいこと尽くめだ。
世界で初めて自動車を作ったメーカーであるダイムラーベンツ社の顧客の中には、とかく“最高の”クルマを求める人が少なくないが、一方で最新のディーゼルエンジンを搭載したモデルを求めるような理知的な好みを持った人たちもいる。このクルマを欲するのは後者だが、対照的な嗜好が同居している様子が面白い。
まじめなセダンを選ぶのが常識的な選択なのだろうが、ここはぜひクーペを選びたい。大胆なウインドウグラフィックを持つE250CGIブルーエフィシェンシークーペのスタイリングは伸びやかで、マジメなパワートレインを持つのとは裏腹に、外見はとても色っぽい。メルセデスベンツは、エコと色気を両立してしまった。