ベントレー史上最も速く、最も力強いモデル「コンチネンタル・スーパースポーツ」に乗った。
停止から時速100キロに達するまでたった3.9秒。最高速度329キロ。560馬力の「コンチネンタルGT」として2003年に始まったシリーズは、610馬力の「GTスピード」を経て、ついに「スーパースポーツ」に到達した。そしてさらに、630馬力のスーパースポーツである。
スーパースポーツは、エンジン馬力が高まっただけではない。リアシートを取り払って2シーターとし、110キロ軽量化した。ちなみに、戦後初の2シーター・ベントレーでもある。
スーパースポーツが現代的なのは、パフォーマンスの向上だけでなく、フレックス燃料に対応するようエンジンが設計されている点でもある。CO2排出削減に大きな効果があるバイオ燃料でも、ガソリンと変わらずにパフォーマンスを発揮することができる。ちなみに、2012年までに、すべてのベントレーがフレックス燃料対応エンジンを導入する予定だ。スーパーラグジャリーブランドのベントレーといえども、時代の要請によって、いわゆる環境性能を織り込んだクルマ造りがなされるようになってきたのだ。
スーパースポーツに乗ったのは、ベントレーの本社と工場のある、イギリス中西部のクルーという町とその周辺。第二次大戦中はスピットファイア戦闘機に搭載される「マーリン」エンジンが製造され、それより前は汽車を作る工場や会社が多く存在していた。
適度な勾配とカーブが続くクルー郊外のカントリーロードでは、スーパースポーツのパフォーマンスの何分の一しか発揮することはできない。一度だけ、自動車専用道路の導入路で全開加速を試みてみたが、瞬間移動するような強烈な加速だった。しかし、そこに荒々しさや粗暴さなどは一切存在せず、きわめてジェントルな、滑るような加速だ。
コンチネンタルGT以来、熟成が続けられているエアサスペンションは4段階に切り替えられるが、最もハードなものから最もソフトなものまで、洗練の極み。道路状況を選ばず、きわめて上質な乗り心地が実現されている。軽量化によって挙動がシャープになり、まるで二回りぐらい小さなクルマに乗っているようだ。それはコンチネンタルGTの延長線上にあるものだが、走りっぷりは大きく異なっている。
インテリアも素晴らしい。革、木、金属、樹脂などが工芸品的なレベルで加工され、絶妙にコーディネートされている。クラシックなものからモダンなものまで、選択の幅はとても広い。
敷居の高いクルマであることは確かだが、それを案じても余りある魅力を備えていることは確かだ。コンチネンタル・スーパースポーツはひとつの頂点を極めている。