世界のベストセラー、フォルクスワーゲン・ゴルフがフルモデルチェンジを果たした。
ゴルフとしては、1974年デビューの初代から数えて六代目に当たる。これまでに累計2600万台以上を生産した、フォルクスワーゲンの大黒柱であると同時に、その動向と内容が世界中の自動車メーカーのエンジニアや開発担当者から注目されている、非常に重要なモデルである。
新型ゴルフは、全体のプロポーションは五代目を踏襲しながらも、顔付きが変わった。異形のツリ目になった。
ゴルフにはさまざまなバリエーションモデルが派生しているが、まずは第一弾として日本に導入されたのは、「TSIコンフォートライン」と「TSIハイライン」の2モデルだ。5ドアハッチバックボディに4気筒エンジンを搭載して前輪を駆動する、最もベーシックなゴルフだ。
五代目の途中から採用された「TSI」エンジンと「DSG」トランスミッションが、どちらにも採用されている。TSIとDSGの組み合わせが、今のゴルフの一大特徴となっており、同時に他社のコンパクトカーを大きく引き離しているポイントだ。
TSIというのは、ガソリン直噴とターボ過給(ハイラインは、ターボ+スーパーチャージャー)を組み合わせたエンジンで、燃費に優れ、排気量1.4リッターながら122馬力(ハイラインは160馬力)という十分なパワーを発生している。
これは、フォルクスワーゲンが提唱している「ダウンサイジング」コンセプトを具現化したものだ。排気量を1.4リッターに下げて燃費を向上させながらも、直噴と過給を組み合わせることでパワーも稼いでいる。
エンジンを側面支援しているのがDSGミッション。ツインクラッチ式7段で、クルマ任せにオートマチックに変速しながら、マニュアルトランスミッションよりも速く変速し、スムーズで、効率的。どちらの技術も、コンピュータによる精密な制御によるもので、ちょっと前なら実現不可能だった。
実際に箱根のワインディングロードで走らせてみても、力不足や不満などはまったく感じられない。コンフォートラインで十分、ハイラインはヘタなスポーティカー顔負けの速さだ。カタログ値の10・15モードでの燃費は16.8km/l(16.2km/l)。実走行では、ここまで良くはないだろうが、ゴルフの伝統的な長所として、長距離走行が苦にならないシートやドライビングポジションの優秀性が大きな価値となっている。500kmや1000kmの連続走行も、苦にならないだろう。
トランクやシートアレンジメントなど、多用途に使える工夫と吟味も、隅々まで抜かりない。低速域での乗り心地が優しくなり、静粛性も向上した。「新車で買って、10年でも15年でも乗り続けたい」と思わせる強い魅力と内容を持っている。でも、ハイラインに4種類用意されている内装が、コンフォートラインでは地味な黒しか選べないのがつまらない。外装も、たった5色しか用意されていないのが、このクルマの唯一の弱点である。