Vol.02 やまがた×佳つ乃
贅と憩いが同居する、京都・祇園の味わいかた
今回の「舌鼓」の舞台は、京都・祇園。
ナビゲーターには、芸妓の佳つ乃(かつの)さんを迎えてお送りする。佳つ乃さんは京都に生まれ、弱冠16歳から舞妓の世界に身を置き、芸の道に生きる女性。だからこそ酸いも甘いも噛み分けて、この街に漂う“粋”を知り尽くしている。
今回FERIC編集部は、前回とは少々趣を変えて、ナビゲーター佳つ乃さん自らが経営する店、『やまがた』を訪れた。祇園町にある『やまがた』は、常連客だけのプライベートな空間が守られた京都古来の町屋造りの店で、案内されたカウンターの奥には梅や桃、桜などの木々が並ぶ庭を楽しむことができる。日常の喧騒から離れて、ほっこりとした感慨にひたりながら、佳つ乃さんに“京の味”の風情を教わった。
「そうどすねえ、京料理といえばみなさん薄味やと思うてはりますでしょ。でも、そんなことないんどすえ。ただ、おだしの色が薄いから誤解されているんでしょうね。でも、塩っ辛いんじゃなくて鰹と昆布の風味がきいた、甘みのある濃さ。食べたときにしっかりした味がついてるのが京都流なんどす。」
素材を生かした鮮やかな色彩からは想像もつかないほど、しっかりと下ごしらえされた濃い味をまとっているのが特徴。では、冬の味覚にはどんなものがあるのだろうか。
「これからの時期でしたら、大市(だいいち)さんのすっぽん料理がほんまに美味しおすえ。すっぽん料理といえば、ちょっと敬遠してしまう人も多いと思いますけど、ここのんは見た目も食べやすい形にしてあるんどす。味も濃くて、癖になってしまいますねえ。」
すっぽんの丸鍋をふるまう『大市』は、元禄時代から約300年も連綿と続く老舗料理店で、故黒澤明監督や福田赳夫元総理などが足しげく通っていたという逸話もあったりして、古都京都ならではの趣を感じさせるのだとか。味だけでなく雰囲気も絶好なのだそうだ。
そして、やっぱり気になるのは、佳つ乃さんが“男性に連れて行ってもらったら嬉しい店”。
「味がおいしいのはもちろんですけど、そこへ行くと落ち着く、という雰囲気はよろしおすねえ。そこで、私が大事やと思う一つが、照明。どんなにおいしいお店でも、蛍光灯の下で食事をするようなところやと、ゆっくりと安らげないと思うんどす。あたたかい雰囲気の白熱灯や間接照明で、ご飯をいただくとより一層おいしく感じますね。」
もちろん、それは飲みに行くときにいえること。
「……飲みに行くんどしたら、Le Peu(ル・プー)さんが好きどすね。ここは、ほのかな照明ですし落ち着きます。内装も、お店の方たちの雰囲気も良くて、よくワインやお水割りを飲みに行きます。」
『Le Peu』は、ゆったりとしたカウンターを備え、パーテーションによって区切られたスペースを設ける、プライベート感漂う大人のためのショットバーである。常連に限らず、旅先でもおいしいお酒を楽しむにはうってつけの店だ。