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日産スカイラインクロスオーバー


  海外で展開されている日産自動車のプレミアムブランド「インフィニティ」の「EX35」に、昨年、ポルトガル・リスボン郊外のカスカイス周辺で乗って、とても感銘を受けた。

 

  ユーラシア大陸のほぼ西端にあたるカスカイスやシントラ、エストリルなどは地中海沿いの由緒あるリゾート地なのだが、道路の舗装と整備があまり行き届いていない。アスファルトが剥がれていたり、凹凸がそのままになっていたりする。平坦に見えていても、表面がザラ付き、割れ、荒れている。そういうところを走ると、バタバタ、ドスドスッという音や振動がモロに車内に伝わってくるクルマが少なくない。日本の道路はおしなべて鏡のようにキレイなものだが、意外と先進国と呼ばれるところでも、荒れているところがある。

 

 

 

  インフィニティEX35で走ったカスカイス周辺の道路の舗装にも荒れ、ひび割れが目立ち、ところによっては穴まで空いていた。高速道路は問題ないが、一般道のコンディションは一様ではない。EX35は、そんなところを涼しい顔で走っていく。もちろん、凸凹やひび割れなどの上を走っていることは乗員には感じさせるのだが、間にワンクッションもツークッションも入れて、不快な騒音や振動をイナしながら、柔らかく進んでいく。

 

  ハンドリングも適度にシャープ。いわゆるSUV特有の高いドライビングポジションではなく、むしろステーションワゴンに近い。エンジンやトランスミッションも洗練されている。インテリアも、とても都会的で大人っぽい。

 

 

  EX35のエンジンを少し拡大し、各部をリファインしたのが、先頃発表された「スカイラインクロスオーバー」だ。御殿場から山中湖周辺で運転したスカイラインクロスオーバーは、EX35のカスカイスでの好印象を、ほぼそのまま引き継いでいた。メーター文字盤のブルーと赤い針が、インテリア全体の造形と色彩センスから“浮いて”見えるところぐらいしか、気になるところが見当たらない。とてもよく練り込まれた、日本車には珍しいタイプのクルマだ。

 

  一円でも安く作って、一台でも多く売ることばかりが耳目を集めているが、ユーザーが長く乗り続けたくなるような、こうした上質なクルマも大切である。

 

 

 

 

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モータリングライター 1961年東京生まれ。自動車と自動車にかかわる人間についての雑誌記事や単行本を執筆している。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。ここ数年、外国を長距離クルマで走ることが続いている。2003年には、東京からロシア・ウラジオストクを経由してポルトガル・ロカ岬まで自らのトヨタ・カルディナでユーラシア大陸を横断。2006年には、ダイムラー・クライスラーのイベント『パリ~北京』に参加し、ロシア・エカテリンブルクから北京までメルセデスベンツE320CDIで走破。2007年に引き続き、今年も、『トランスシベリア2008』に出場し、総合10位、クラス9位で完走した。
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