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日産フェアレディZ


  新型フェアレディZは、写真やテレビCFで見るより、実物の方が数段カッコいい。旧型よりホイールベースを10センチも短くしたと聞いていたので、2次元で見ると、寸詰まりになった印象がぬぐい去れなかったのだ。サイドウインドの後半部分も直線と曲線が整理されていないようで、スッキリしていなかった。それも、ホイールベース短縮に伴って全長を短くした影響ではないかと見ていた。しかし、そんな心配は杞憂に終わって、実物は見事に筋肉質に引き締まっていた。光線の加減で陰影に富み、とても存在感がある。



  ホイールベース短縮とさらなる開発の甲斐もあって、新型Zは山岳路を気持ちよくクイックイッと曲がっていく。このままコーナーが永遠に続けばいいのにと願ってしまうのは、平坦な直線路や緩いコーナーでは、アラばかりが目立ってしまうからだ。

  エンジンフィーリングは退屈で、回すとうるさい。6速MTのシフトストロークは長く、動きも渋い。変速時に最適な回転数に制御する「シンクロレブコントロール」も、ボタンを押して選ばなければならないなんて、腰が引けている。本当にいいなら、それだけに統一するべきだろう。

  穏やかに流していると、ミッションやデフ、タイヤなどからの雑音が割り込んで来て、喧しい。大人が乗るスポーツカーとしては、デリカシーに欠けている。買うなら、ATか。コーナーも大切だが、直線をゆっくり走っても味わい深いスポーツカーが大人には求められる。



  たしかに、ホイールベース短縮はコーナリング性能を大幅に高めてくれたが、逆にそれ以外のスポーツカーの楽しみを置き去りにして来てしまったようだ。でも、歴代Zは、もともとアメリカで大量に売るために作られたクルマだと考えれば、納得がいく。無いものねだりをしても仕方がない。昔のように、Zが若者中心に売れていくのならば、コーナリング性能中心に開発が進められていっても構わないだろうが、新型Zの中心的な購買者層はもはや若者ではない。その辺りの戦略を見誤った結果でなければいいのだが……。

日産フェアレディZ PHOTO GALLERY
モータリングライター 1961年東京生まれ。自動車と自動車にかかわる人間についての雑誌記事や単行本を執筆している。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。ここ数年、外国を長距離クルマで走ることが続いている。2003年には、東京からロシア・ウラジオストクを経由してポルトガル・ロカ岬まで自らのトヨタ・カルディナでユーラシア大陸を横断。2006年には、ダイムラー・クライスラーのイベント『パリ~北京』に参加し、ロシア・エカテリンブルクから北京までメルセデスベンツE320CDIで走破。2007年に引き続き、今年も、『トランスシベリア2008』に出場し、総合10位、クラス9位で完走した。
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