TOP > Car > Car コンシェルジュ 金子浩久 > 驚異と脅威の21世紀型スーパーカー「NISSAN GT-R」

NISSAN GT-R


NISSAN GT-R  先日発表された日産GT-Rは、これから世界中のクルマ好きを熱狂させていくことになるだろう。そう断言できるほどの内容とパフォーマンスを持っている。


  まず、異次元の速さに驚かされた。スロットルペダルを床まで踏み込むと、身体がシートに強く押し付けられるのがわかる。しかし、その速さも“整然”としているのだ。これ見よがしにでも、わざとらしくもない。480馬力ものハイパワーがありながら、ホイールスピンひとつせずに、クールに瞬間移動する。コーナリング性能も、ケタ外れ。自分の血液が左右に寄るのがわかる。


GT-Rには画期的なハイテクが満載されていて、ここにすべてを紹介することができないが、まず一番最初に感銘を受けるのが、トランスミッションの変速のスムーズさと速さだろう。GT-Rのトランスミッションは、ふたつのクラッチを電子制御して自動的に変速する、いわゆるクラッチレスマニュアルタイプだ。“D”モードに入れておくだけで、走行状況に合わせてクルマ(のコンピュータ)がオートマチックにギアを選んでくれる。だが、その速さとショックの少なさは、これまでどんなクルマでも経験したことがない。原理的に同じアウディとフォルクスワーゲンの「DSG」や、構造が共通するフェラーリやアストンマーチンのものなどとは、まったく較べものにならない。GT-Rでは、特に、シフトアップの速さとショックの少なさが印象的だった。そして、GT-Rのハイテクは、オーナーが自分好みにさまざまに設定できることも大いに魅力的だ。


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NISSAN GT-R  驚かされたのは、加速だけではない。ブレーキも絶品だ。日産が仕様を決定して、イタリアのブレンボ社に特注したブレーキシステムは、強力な上に、デリケートな操作にも反応してくれる。ブレーキの優秀さでは、これまでポルシェに定評があったが、GT-Rのそれもまったく遜色はない。


  さらに、超ハイパフォーマンスを実現していながら、乗り心地が劣悪だったり、操作しにくかったりするところがないのも、奇跡だ。シートやハンドルの仕上がりや操作系統のインターフェイスなどについて意見の分かれることがあるかもしれない。限られた条件下での試乗だったが、驚異的なパフォーマンスの一端に触れることはできた。ポルシェやフェラーリなど、世界のスポーツカーメーカーは脅威に感じることは間違いない。


NISSAN GT-R

モータリングライター 1961年東京生まれ。自動車と自動車にかかわる人間についての雑誌記事や単行本を執筆している。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。ここ数年、外国を長距離クルマで走ることが続いている。2003年には、東京からロシア・ウラジオストクを経由してポルトガル・ロカ岬まで自らのトヨタ・カルディナでユーラシア大陸を横断。2006年には、ダイムラー・クライスラーのイベント『パリ~北京』に参加し、ロシア・エカテリンブルクから北京までメルセデスベンツE320CDIで走破。2007年に引き続き、今年も、『トランスシベリア2008』に出場し、総合10位、クラス9位で完走した。
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