先日発表された日産GT-Rは、これから世界中のクルマ好きを熱狂させていくことになるだろう。そう断言できるほどの内容とパフォーマンスを持っている。
まず、異次元の速さに驚かされた。スロットルペダルを床まで踏み込むと、身体がシートに強く押し付けられるのがわかる。しかし、その速さも“整然”としているのだ。これ見よがしにでも、わざとらしくもない。480馬力ものハイパワーがありながら、ホイールスピンひとつせずに、クールに瞬間移動する。コーナリング性能も、ケタ外れ。自分の血液が左右に寄るのがわかる。
GT-Rには画期的なハイテクが満載されていて、ここにすべてを紹介することができないが、まず一番最初に感銘を受けるのが、トランスミッションの変速のスムーズさと速さだろう。GT-Rのトランスミッションは、ふたつのクラッチを電子制御して自動的に変速する、いわゆるクラッチレスマニュアルタイプだ。“D”モードに入れておくだけで、走行状況に合わせてクルマ(のコンピュータ)がオートマチックにギアを選んでくれる。だが、その速さとショックの少なさは、これまでどんなクルマでも経験したことがない。原理的に同じアウディとフォルクスワーゲンの「DSG」や、構造が共通するフェラーリやアストンマーチンのものなどとは、まったく較べものにならない。GT-Rでは、特に、シフトアップの速さとショックの少なさが印象的だった。そして、GT-Rのハイテクは、オーナーが自分好みにさまざまに設定できることも大いに魅力的だ。
驚かされたのは、加速だけではない。ブレーキも絶品だ。日産が仕様を決定して、イタリアのブレンボ社に特注したブレーキシステムは、強力な上に、デリケートな操作にも反応してくれる。ブレーキの優秀さでは、これまでポルシェに定評があったが、GT-Rのそれもまったく遜色はない。
さらに、超ハイパフォーマンスを実現していながら、乗り心地が劣悪だったり、操作しにくかったりするところがないのも、奇跡だ。シートやハンドルの仕上がりや操作系統のインターフェイスなどについて意見の分かれることがあるかもしれない。限られた条件下での試乗だったが、驚異的なパフォーマンスの一端に触れることはできた。ポルシェやフェラーリなど、世界のスポーツカーメーカーは脅威に感じることは間違いない。