207CCや307CCなど、プジョーはここ最近「CC」のラインナップを拡充してきている。正確には、“最近”ではなく、“ずっと昔”からなのだ。プジョーが電動開閉式ハードトップを発表したのは、なんと75年前の1934年の「401エクリプス」にまで遡る。途中、ずっと休みがあって、66年後の2000年に「206CC」を発表して、蘇った。休んでいた間には、布の幌を使ったカブリオレが作られていた。
布のカブリオレか、ハードトップのCCか。
それぞれ長所と短所があり、クルマによっても向き不向きがある。2シーターのスポーツカーや、高級車には布のカブリオレが用いられることが多い。スポーツカーは重量の軽さを要求し、馬車時代から続くエレガンスを再現するのが高級車だ。
では、メタルトップのCCは、どんなクルマがふさわしいのかといえば、308CCのような4人乗りのセダンにピッタリなのだ。ハードトップなので、閉めて走っている時の静粛性や耐候性の高さが、CCの長所だからだ。リアシートにも誰かを乗せて走る場合には、それらの快適性の確保は大切になってくる。
また、4座オープンカーにとって最も大切なことはスポーツカーのように飛ばすことではなくて、4人乗ってオープンで走った時にどれだけ楽しさを演出できるかどうか、だ。シートと乗り心地が快適で、後席から外がどう見えるかといった視界も大切。
走り出して、308CCで最初に驚かされるのが、エンジン。最新の直噴ターボエンジンは、たった1.6リッターしかないのにトルクが十分に発生し、どの回転域からも踏めばすぐに反応する。レスポンスが鋭く、とても扱いやすいが、出しゃばらず、縁の下の力持ちに徹しているところが好ましい。
10km/hまでなら走行中でも開閉できる電動ハードトップも、オープンエアモータリングの楽しさを昔から熟知しているプジョーならではの設計だ。開閉時間20秒というのは標準的だが、10km/hと0km/hでは次元が違う。10km/hまで確保されているならば、街中のほとんどのタイミングの赤信号でも開閉できる。つまり、走っている間中の、ほぼいつでも開け閉めできるわけだから、面倒臭がって閉めっ放しにはならない。贅沢で、大人っぽく味わい深い。