大人の純愛というのもあると思うんです。片想いかもしれませんけど。むしろ片想いの方があるのかもしれないと、先日の彼に偶然会った時に思いました。
私が書いた純愛小説「ロマンチスタ」というのが、主人公の女の子の中では恋が始まっているんですけど、その好きな男の子の中でも恋が始まろうとしているところで、終わってしまう話なんです。
片想いしている時って一番良い時期だと思いません?もちろん、付き合ってからも良い時期はあると思うんですけど、この人の事をもっと知りたいとか、まだミステリアスな部分が多い時。付き合って楽な時も好きなんですけど、片想いをしていて緊張している時も良いなって改めて思ってしまって 笑。よく使われる言葉で言うと、甘酸っぱい。そういう感覚って大人でもあると思うんです。大人も子供も今ではあまり変わらないとは思うんですけど、レストランという食空間で感じる、甘酸っぱい時間というのは、大人が過ごせる特別な時間だと思うんです。目の前に片想いの彼がいたら、“綺麗に見せなきゃいけない”っていう意識が働きますし。
実は、先日の彼が言った当時の台詞を「ロマンチスタ」の中に入れているんです。「お前は俺と同じ匂いがする」っていう台詞。この台詞を彼に唐突に言われて、彼に対しての恋心が生まれたんです。きっとこの人の事は好きにならないだろう、って思っていたのに、思ってもいなかった事を言われたので、なんか惹かれてしまったのだと思うんです。そんな不意の瞬間に弱いのかもしれません。
レストランでの料理もそうだと思うんですよ。想像もしていなかった美味しい料理が出てきた時、すごく印象に残る。そして、目の前には彼がいる。その記憶は匂いとか音みたいに強く残ると思うんです。
インタビュー後、供された料理は、
オレンジ風味のクスクスの上にフォアグラのフランをのせ、フォアグラの上にはレモン風味の牡丹海老のタルタルをのせた前菜『フォアグラのトライアングル 柑橘の香るクスクスと牡丹海老のタルタル』(ディナーコース¥12,000より) | ||
鯛をファゴッティーニの中に詰め、赤玉葱のグレナデンシロップ(ザクロジュースと砂糖によって作られたノンアルコールの赤シロップ)にマリネしたエストラゴンソースがからむパスタ『鯛を包んだファゴッティーニ 黒胡椒とエストラゴンのソース』(\2,600) | ||
シャロレー種の仔牛フィレ肉をローストし、上にカプリーノチーズをのせバーナーで焼き、フォンドボーのソース、イタリア産ジロール茸やじゃがいもが添えられたメイン『“シャロレー”仔牛フィレ肉とカプリーノチーズのグラティナート ジロール茸を添えて』(\4,800) | ||
ベースのソースは白桃と赤桃のソース。その上にビアンコマンジャーレ(アーモンドのババロア)を置き、上に蜂蜜ゼリー、バニラジェラートをのせ、コンポートにした桃を添えたドルチェ『白桃とアマレットの“ビアンコマンジャーレ”』(ランチ、ディナーともに¥8,800コースより) |
どの料理も美味しいのはもちろん、食材や、器へのこだわり、繊細で鮮やかな盛り付け、そして内装とのコンビネーションが完璧と思えるほど絶妙だった。
このテーブルを大切な人と共有できたら、、、と思うと、この食空間はより一層、甘美なものになるに違いない、生嶋さんへのインタビューを終えた後だからか、そう思わざるを得なかった。