お店側としては男性にリードして頂きたい (春藤祐志)
「さりげないことの積み重ねだと思うんです。お店側からすると、やっぱり男性にリードしていって欲しいんですよ。今はワインブームですから女性に気を使うのは良いとは思うんですけど、女性に全てを任すのではなくて、男性が好みのワインを聞いて、我々に相談してくれると良いと思います。ワインの知識とか料理の知識とかいらないんです。そういう知識がないと恥ずかしいと思う人は沢山いると思うんですが、本当に相手の好みを聞き出すというのが大事なんです。
結局、女性の好みを女性が直接僕らに言うと、サービスマンと女性の会話になっちゃうんですよ。そうなると、男性と女性の会話はなくなってしまうので、それはあまり良くないと思うんです。僕らはずっとサービス業をやってきて、そんなに大きくない店ですし、一組一組がここで過ごす時間を大事にしていきたいんです。
女性の方に任せ過ぎず、ほったらかし過ぎず、という事が大事だと思うんです。逆に男性が「全部、俺がやる」って言うのも良くないと思いますし。その辺のバランスですよね。」
無理せず、自然に振舞って欲しい (伊東友香)
「いつも通り、普通にしていて欲しいです。レストランって女性が男性の事を知るヒントになると思うんです。連れて行ってくれたお店で、その人の世界観がわかる。慣れていたら、こういう雰囲気が好きなんだとか、ドギマギしてたら、頑張って連れて来てくれたんだ、と嬉しくなってしまう。私は、好意のある方としかご飯を食べないからそう思うのかもしれませんが、好意はないけど、とりあえず誘われたから・・・、という女性は、もっと目は厳しいと思いますけど。レストランという非日常的な空間の中ででも、その人は自然に振舞っているというのが魅力的だと思います。
でも慣れている人っていうのが、一番危ないと感じてしまう事もありますね。
こういう素敵なレストランででも、どこででも、物怖じせず自然に、過剰でもなく過少でもないエスコートが出来て、そつなく会話ができたりしたら、間違いなく遊んでいるんだろうな・・・って思ってしまいますね(笑)。」
向かい合わせに座る、最初のデート (伊東友香)
「初めてデートしたお店がカウンターのお店だったら、隣に座りますけど、逆に別れ話って肩を並べながら「僕たちそろそろ・・・」なんて言い辛いじゃないですか。やっぱり、始まりと終わりはテーブルを挟んで、ワインでも飲みながら、言い辛い事を、ちょっと勇気を出して言う。テーブルを挟むという距離感があるから、ちょっと安心できると思うんです。テーブルを挟んで対面していて、ずっと目を見ながら話すじゃないですか。会話が進んでいった時に、やっぱりドキっとする瞬間がありますよね。たぶん、その時が恋の始まりなんですよ。美味しい料理を食べて、ワインを飲んで、年代とか趣味とか、共通点を話して、ちょっとキュンとしたりする。そういう瞬間がレストランにはあるんだと思います。」
コース料理が終わるまでの時間。それは、二人にとっての始まりの時間。
そんな時間を演出する本日の料理は、
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カリフラワーのババロアと蟹のヴィネグレット和えトマトと春菊ソース カリフラワーのババロアの上に、蟹のビネガーで和えたものを添えて、その上に削った生のカリフラワーを載せ、トマトと春菊のソースをかけた、非常に春らしく綺麗な前菜。 |
仔鳩のロティと春野菜 仔鳩はしっとりレアになるように、ゆっくりと焼きあげ、鳩の旨味を存分に味わえる一品。春野菜にサリエットというハーブで香りづけしたものが添えられ目にも美しい。 |
半冷凍のポム・ダムール 中をくりぬいて半冷凍にしたフルーツトマトに、カシスと白ビールで作ったアイスクリームを詰めた、見た目も鮮やかな味覚にも楽しいひと皿。 |
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春藤祐志さんに、本日の料理に合うワインは?と尋ねると、
「合うのは?と聞かれると、ブルゴーニュの比較的若い2004年くらいの赤ワインと答えますけど、それは、様々な種類のワインを飲んできて、様々な種類の料理を食べてきた私の経験値からのもので、人によって違うと思うんです。料理に合わせるのは重要な事だと思うのですが、個人の好みが一番大事だと思うので、まず好みを聞いて、その中で料理に合ったワインをお薦めします。」
との返答。伊東友香さんの好みを聞くと、しっかりした赤ワインという事で、春藤さんのお薦めを頂く事に。OREXIS、そして春藤さんのホスピタリティを感じた一瞬だった。
グラスを傾け、料理を愉しみながら伊東友香さんは言う
「でも、男の人って大変ですよね。付き合いたいと思って、レストランに誘って、その後BARに行ったとしても、『ごちそうさまでした』って彼女に言われて、ほとんど、帰ってしまう訳じゃないですか。それでもめげずにまた誘う。月に4回誘ったりしたら、すごい投資額ですよね。何で男の人って負担が多いんでしょう。お店も決めて、話題も考えて、やっぱり大変ですよね。」
今回、お二方のお話を聞き、改めてレストランという存在の特別感を感じざるを得ず、料理だけではない、ホスピタリティ、時間、そして二人の距離感にも舌鼓を打ちたいと思う取材となった。
レストランには、美味しい料理とワインはもちろん、恋する二人の距離を縮める時間と空間が存在するのだ。