
以前に紹介したシトロエンC6の弟分と言えるのがC5だ。
シトロエンには様々なモデルがラインナップされているが、大きく二系統に分けるとすれば、基準となるのは「ハイドロニューマチック・サスペンション」の有無だろう。
オイルとガスを封入した特殊なダンパーを用いた、このサスペンションを採用したシトロエンの走りっぷりには独特のものがある。まるで大型船に乗っているかのようにフラットな乗り心地は、他のどんな高級車にも似ていない。
大型船がイメージしにくければ、ウオーターベッドを思い出して欲しい。フワフワしているのだけれども、表面は波立っていないと喩えればいいのだろうか。コーナリングや加減速での姿勢変化が、きわめて少ない。長距離を走れば走るほど、疲労の少なさを自覚するはずだ。

この革新的なサスペンションは1955年にデビューした「シトロエンDS」に初めて実用化されたもので、その後、DSを継ぐ歴代シトロエンが採用してきた。
モデルを経るごとに改良され、C5に搭載されているのは「ハイドラクティブ3プラス」という最新版。電子制御によって、スポーツモードとノーマルとスポーツを自動的に切り替えるオートモードが備わっている。
このオートモードが実に賢かった。高速道路の径の大きなインターチェンジ・ループなどで加速していくと、あるところでジワッとパワーステアリングのアシストがダイレクトになり、サスペンションのダンピング量が増えて、ピシッと引き締まるのが体感できた。その切り替わり方が自然で、実にスムーズなことに感心させられた。
歴代シトロエンは、その個性的なスタイルからは想像できない高い実用性を持っている。ハンドルが良く切れ、どこへでも駐車しやすく、トランクが大きい。僕が20年前に乗っていた「CX」(DSの後継車)など、都内で駐車するのに、一度も切り返したことがなかったほどだ。いや、ホントに。

トランクは、ただ大きいだけでなく、完全な直方体だから。とても使いやすい。タイヤハウスの出っ張りがないから、大きなスーツケースなども出し入れしやすく、無駄なスペーすが発生しない。お洒落なんだけど、実質も大切にするフランス人が作ったクルマらしい。エクステリアとインテリアがC6に較べてやや常識的なところがシトロエン・ファンには物足りないが、夢のような乗り心地と実用性の高さには磨きが掛けられ、魅力を増している。C6も欲しくなるが、C5も大いに人に薦めたい。