TOP > Watch > ネクスト・ウォッチ カタログ > 名匠によるオブジェダールワンオフ、トゥールビヨン

JEAN DANIEL NICOLAS[ジャン・ダニエル・ニコラ]


  1970年代、世界5大ジュエラーの一つである〈ショーメ〉が、高級時計ブランド〈ブレゲ〉を再興しました。そのなかで、オリジナル・ブレゲを徹底的に研究・解明して、懐中時計サイズでしか存在しなかった「トゥールビヨン」のサイズダウンを実現、腕時計サイズのトゥールビヨンの製品化に尽力して、ブレゲ再興のキーマンとなった時計師がダニエル・ロート氏でした。


  現在でこそ当たり前となった腕時計サイズのトゥールビヨンが、〈ブレゲ〉により初めて製品化されたのは’80年代のことでした。

JEAN DANIEL NICOLAS[ジャン・ダニエル・ニコラ]  このトゥールビヨンの実用化という奇跡、より美しい意匠の実現を成し得たロート氏はゆえに、〈天才時計師、アブラアン-ルイ・ブレゲの生まれ変わり〉と称賛されているのです。

  そして’88年、ロート氏は、自らの名前を冠した時計ブランドを設立して、短期間で全世界に知れ渡るほどの成功を収めました。が、「生涯、時計師でいたい」という強い思いから、余りある年収などを放棄して、2000年に独立し、インディペンデントとなったのです。

  友人でもある独立時計師のフィリップ・デュフォー氏も自宅やアトリエを構えるジュウ渓谷にある、スイスのル・サンティエの自宅工房で1人、氏ならではの2分間でキャリッジが1周する〈ツインバレル・トゥーミニッツ・トゥールビヨン〉の開発に着手。2003年に1作目が完成。この記念すべき、ロート氏自らが設計・開発からパーツを切り出して手組みした作品は、デュフォー氏と同じディストリビューターである日本のシェルマンを介して全世界に紹介されて大きな話題となったのです。

  ちなみにロート氏による新星時計ブランド〈ジャン・ダニエル・ニコラ〉とは、ロート・ファミリーの名前に由来します。氏を精神的にも支えるジャン(長男)、そして本人(ダニエル)、夫人(ニコラ)の名前です。

JEAN DANIEL NICOLAS[ジャン・ダニエル・ニコラ]  この年(’03年)、シェルマン代表である磯貝氏のアテンドにより、ル・サンティエにあるロート氏のアトリエを訪ねました。そのとき、ロート氏は、完成した瞬間からミュージアム・ピース級であるこの名作について、「オブジェダール(芸術作品)にしたかったのです」と静かに語ってくれました。通常、1分で1周するトゥールビヨンを、2分で1周させるという技術的な難しさなどについて、「ユーザーに理解してもらえなくてもかまわない。“美”は主観的なものだが、私自身が“美”を突き詰めたこの〈ツインバレル・トゥーミニッツ・トゥールビヨン〉を見る者が、“美しい!”、“アートだ!”と感嘆してくれたら本望だ」という本意が胸に響きました。また、「1930年代のパテック フィリップなどの名作には、心を揺さぶる魅力を感じます。それらはオブジェダールだからです。自分の作品も、そうありたいのです」と述べました。

  ロート氏は現在も、朝7時から深夜までアトリエに籠もりっきりで、1点ごとに改良を繰り返し、日々進化していく〈ツインバレル・トゥーミニッツ・トゥールビヨン〉を作り続けています。年産目標は2点。

  間もなくオリジナル変形シェイプの国内入荷があるようです。ロート氏の精神性などが注ぎ込まれた渾身力作、そのオブジェダールを、拝見させて頂くのが楽しみです。
【SPEC】
Twin Barrel 2Minute Tourbillon
ツインバレル・トゥーミニッツ・トゥールビヨン
ブレゲの再来、Mr.トゥールビヨンことダニエル・ロート氏が、現状では1年から2年がかりでようやく完成させる、時計の究極のオブジェダール。ツインバレル。パワーリザーブは60時間。ケース素材は18KPG(ピンクゴールド)及びPT(プラチナ)。シェイプは写真のラウンド型、オリジナル変形シェイプの2種類。価格は1600万円~。受注生産。

(問)シェルマン銀座店
℡03-5568-1234
http://www.shellman.co.jp



松田朗 Akira Matsuda

ジャーナリスト まつだ あきら。東京ニュース通信社特派記者。雑誌『TVガイド』、『TVTaro』、『TVBros』などに携わる。1992年より雑誌『Begin』で時計の広告タイアップ記事を、『モノマガジン』、『VOCE』、『POPEYE』、『クールトランス』の時計特集などを。現在『時計Begin』での新連載、『ブルータス』などでの時計特集を準備。正規時計店の広告、タレントを起用するイベントなども手掛ける。