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ファーブル・ルーバ【アンジェリュース・クロノ・ダトリュクス】


  SIHH2009開催中のスイス・ジュネーブでは、〈ドゥラクール〉やヨルグ・イゼック氏率いる〈hD3〉、〈アントワーヌ・プレジウソ〉、〈ジャン・メレ&ギルマン〉といった独立系の時計ブランドそれぞれも独自に新作発表会を行いました。こうした独立系の中では、1718年創業の〈FAVRE-LEUBA〉(ファーブル・ルーバ)が1948年製の名作ムーブメントを搭載して放つ、ご覧のクロノグラフ〈アンジェリュース・クロノ・ダトリュクス〉が印象的でした。


  この新作の詳細の前にまず、世界最古の時計ブランドとされるファーブル・ルーバの足跡について述べてみたいと思います。創業者である時計師のアブラハム・ファーブルは1718年、マスターウォッチ・メーカーの称号を取得。そして1737年、スイス・ジュウ渓谷にあるル・ロックルに時計製作工房を設立。製作技術の革新と品質向上に尽力しながら、ビジネスは順調に拡大。一族で8世代もの長きにわたって、ファーブル家の経営が続いていったのです。1814年には、時計商のオーギュスト・ルーバとパートナー契約を交わし〈ファーブル・ルーバ社〉と改名。19世紀から20世紀の初頭にかけては世界中に販売網を広げました。1950年代から60年代は、時計の生産数、従業員数でスイス最大規模を誇り、高度計、水深計付きウォッチなど、プロフェッショナルのための計器作りに定評がありました。その後、スイスの時計産業が壊滅的な打撃を受けることになる69年の日本発のクオーツムーブメント・ショックにより家族経営を離れ、Benedom SA、LVMHなど他社の手に渡ることに。しかし2003年に見事、独立を果たしています。

  国内代理店であるノーブルスタイリングの山口氏によると「奇跡としか言いようがありませんが、ファーブル・ルーバは休眠期間がありません。なぜか日本にはありませんでしたが、全盛期にはチリ、インドなど、世界中に拠点を広げましたし、名門時計ブランドの〈ボヴェ〉を所有、ルクルトと兄弟会社であった時期もありました」とのこと。



  こうしたファーブル・ルーバが放つ、クラシカルかつオーセンティックな写真のクロノグラフには、このたび50個のみ発見された1948年製のアンジェリュース製Cal.(キャリバー)252が搭載されます。アンジェリュースは、クロノグラフも開発したスイスのマニュファクチュールですが、バルジュー社や、ブライトリングが使用したヴィーナス社などとは異なり、他社への供給に積極的ではなかったようです。

「中でも、〈アンジェリュース・クロノ・ダトリュクス〉に搭載されるCal.252は極端に生産数が少ないとともに、2つのディスクで日付を表示する、現代でいう「ビッグデイト」表示機構が搭載されたはじめてのクロノグラフ・ムーブメントであり、歴史的にも重要なムーブメントのひとつです」(同・山口氏)。

  このモデルですが、じつは2009年1月にスイスを訪れたときに、実物はおろかサンプルも完成していませんでした。個人的にも早く、駆動するところを見たくて仕方ありません。

〈SPEC〉
1948年製のアンジェリュースCal. 252を搭載。振動数は、毎時/1万8000振動。48時間パワーリザーブ。手巻き。18KWGケース。世界限定50個。発売時期未定。予価630万円。

(問)ノーブルスタイリング
℡03-5775-1866
公式サイト : http://www.favre-leuba.ch/
松田朗 Akira Matsuda

ジャーナリスト まつだ あきら。東京ニュース通信社特派記者。雑誌『TVガイド』、『TVTaro』、『TVBros』などに携わる。1992年より雑誌『Begin』で時計の広告タイアップ記事を、『モノマガジン』、『VOCE』、『POPEYE』、『クールトランス』の時計特集などを。現在『時計Begin』での新連載、『ブルータス』などでの時計特集を準備。正規時計店の広告、タレントを起用するイベントなども手掛ける。