TOP > Watch > ネクスト・ウォッチ カタログ > 究極至高の現行クロノグラフ ~A.ランゲ & ゾーネ『ダトグラフ』~

A.ランゲ & ゾーネ『ダトグラフ』


  主観ですが、究極至高の時計師は、ピュアな人間性も何もかも含めてフィリップ・デュフォーさんだと思います。そして究極至高のクロノグラフといえば、ジャーマンウォッチの最高峰A.ランゲ & ゾーネの『ダトグラフ』だと思うのです。

A.ランゲ & ゾーネ『ダトグラフ』  その理由は、スイス時計の発祥の話にまで遡ります。宗教弾圧により、フランスを追われたキリスト教徒カルヴァン派の人たちがスイスのジュネーブ、仏との国境沿いのジュウ渓谷に入りました。その中には時計という精密機器の製造に従事する方もいて、温かい季節は農業に、雪に閉ざされる冬季は屋根裏部屋〈キャビネット〉で時計作りを行いました。スイスの時計作りはこのようにして始まり、時計師たちのことをキャビノチェと呼ぶようになったのです……。

  ムーブメントを得意とする者、ケースを手掛ける者がいて、1個の完成品を分業で作ること自体が、スイスの時計作りの伝統となっています。

  以来、1960年代ころまで継承された、ジュウ渓谷の名匠たちの技術を現代に引き継ぐ時計師がいます。1800年代より祖先が住むジュウ渓谷において、地板から歯車までを完全手作業で切りだし、歯の内側までを木で磨き上げ、その地に自生するジャンシャンという植物の茎で磨き上げて1個の時計を完成させるフィリップ・デュフォーさん。

  一昨年の冬、ジュネーブ。市の時計協会やレマン湖畔の時計店を回っているときに、「デュフォーさんがA.ランゲ & ゾーネのダトグラフを買ったらしい」という噂が飛び回りました。3ヶ月後、スイス・バーゼルでご本人にあって、そのことを問うと、ニヤリとしながら、ふところから取り出して見せてくれたのが、まぎれもなく『ダトグラフ』PG(ピンクゴールド)ケース・モデルでした。

A.ランゲ & ゾーネ『ダトグラフ』  デュフォーさんは黒子となり、かつて大手メゾンの「グラン・プティ・ソヌリ」といった超絶コンプリケーションを開発、設計、製造してしまうような優れた時計師であると同時に、人を気遣う優しいジェントルマン。けれど誠実な方であるため、「いいものはいい。だめなものはだめ」とはっきりとおっしゃいます。ゆえに「ランゲほど優れた製品を作る既存メーカーはない。ダトグラフのムーブメントの配列の美しさ、高い機能を超えるクロノグラフは、そう簡単にあらわれないだろう」と述べたこともありました。

  かのデュフォーさんも尊敬の念を持つ『ダトグラフ』は、ジャーマンウォッチの枠を超え、時計史にその名を刻むべき一本ではないでしょうか。


A.ランゲ & ゾーネ『ダトグラフ』   A.ランゲ & ゾーネ ダトグラフ】
ケース径39㎜。厚さ12.8㎜。シルバー無垢ダイヤル。サファイア風防。Cal.L951.1。手巻き。18KPGケース。615万3000円。

(問)A.ランゲ & ゾーネ
℡03-3288-6639
www.lange-soehne.com





松田朗 Akira Matsuda

ジャーナリスト まつだ あきら。東京ニュース通信社特派記者。雑誌『TVガイド』、『TVTaro』、『TVBros』などに携わる。1992年より雑誌『Begin』で時計の広告タイアップ記事を、『モノマガジン』、『VOCE』、『POPEYE』、『クールトランス』の時計特集などを。現在『時計Begin』での新連載、『ブルータス』などでの時計特集を準備。正規時計店の広告、タレントを起用するイベントなども手掛ける。