春のワイン業界の大イベントはイタリアのヴェローナで開催されます。ロミオとジュリエット生誕の地として、さわやかな白ワインソアーヴェ、陰干ししたブドウから造られる複雑な旨味の赤ワイン、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラの生産地としても有名です。
「ヴィニタリー」と呼ばれるそのイベントには世界32カ国からワイナリー4200社がブースを出店し、自慢のワインを前に各国のバイヤーと商談を繰り広げるのです。ワインを輸入する会社にとっては新商品を探す絶好の機会。だだっ広い会場内を5日間、朝9:00からお昼もとらずに夜6:30までひたすらテイスティングを続けます。
ワインの生産量では毎年フランスと1位を競い合うイタリア。20州すべてでワインが造られており、各州の気候や風土、そして土壌の違いから異なったタイプの味わいが生まれます。
北イタリアはアルプス山脈の影響で冷涼な気候となりピエモンテ州では繊細さを持つ高級な赤ワインバローロ、バルバレスコが、そしてミラノを州都とするロンバルディーア州ではフランスのシャンパーニュにも負けない美味しさの発泡酒フランチャコルタが生産されています。
対照的なのはフィレンツェを州都とするトスカーナ州。ティレニア海に接する温暖な気候では力強い赤ワインが生まれ、特に海沿いのボルゲリ地区ではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ種からボルドータイプのワインが造られ、スーパートスカーナと呼ばれています。
パヴィリオンは万博会場のように州別に設営されており、各州で生まれるワインのタイプを把握していれば気になる所だけ回ればいいのですが、イタリアらしいというのか1件のワイナリーのブースに入ると必ず着席してテイスティングを行うスタイルになっています。つまり現地のワイナリーを訪問した時のように時間が掛かるのです。
そんな中でカリスマ的醸造家として30社のコンサルタントを手がけるカ・ヴィオラさんのブースに入りました。イタリアンスーツをスマートに着こなす彼が目の前に現れワインを注いでくれた時、あまりのかっこよさに見とれてしまいました。ワイン業界では大変有名な人物。彼の手がけたワインは確実に美味しくなり、ワイン専門誌でも評価が非常に高いのです。
ピエモンテ州で生産されたバルヴェーラ・ダルバはスミレの花の香り。リグーリア州のヴェルメンティーノはオレンジの花。繊細で華やか、そして華麗なワインをカリスマ醸造家とテイスティング。素晴らしいワインに出会った時は幸せな気分になりますが、そのワインを造っている人のイメージがワインと重なっている時には感動してしまいます。
音楽に作曲家の個性があるように、醸造家の好みや求めるスタイルが反映されるのがワインなのです。