
なんだか無性にワイン畑を回りたくなり、1ヶ月レストランを休業してヨーロッパに出掛けていました。いつも仕事にかこつけて世界のワイナリーを訪問しているのですが、今回はビジネスパートナーとスタッフも同行。
旅のテーマは「フランスとイタリアの地方料理とワイン」。レストランに置く新しいワインとそのワインに合った地方料理発見のツアーです。スタートはブルゴーニュ地方の中心地ボーヌ。レンタカーを借りてブドウ畑回りはスタートしました。今回の目的地はフランスのメジャーなワイン生産地ほぼ全部と、北イタリアのピエモンテ州、ロンバルディア州、そしてボルドースタイルの赤ワイン生産で注目のボルゲリ地区を擁するトスカーナ州です。

今回訪問した約30軒のワイナリー。何処をご紹介しようか迷ってしまいますが、まずはとっておきのシャンパーニュから。
新アイテム発表の為来日したシャンパーニュ地方のメゾン、ジロー・エマールの12代目当主クロード・ジローに会えたのは今年の春でした。これまで高価なシャンパーニュといえば代名詞はドン・ペリニヨン、クリュッグ、クリスタル、サロン、ボランジェなど。ところが一昨年あたりから聞きなれないシャンパーニュの名前を耳にするようになりました。その名はアンリ・ジロー。特に最上級のフェ・ド・シェーヌは生産量が少なく、大半はヨーロッパの王室や上流階級で消費されてしまいます。近年日本に紹介されるようになり、1度飲んだ人はその味わいの深さに強い印象を受け、忘れられない名前となるのです。

メゾンはAY(アイ)村の中心地にこぢんまりと存在していました。他の高級シャンパーニュのメゾンは見るからに豪華な建物が多く威圧感を感じますが、アンリ・ジローはその真反対。気さくな雰囲気は当主クロードや奥様、お嬢さん、そしてお母さんらしき老婦人にも共通のものでした。
シャンパーニュは、疲れた時に飲むとその繊細でかつ深い味わいが理解できない、自分の体調が分かりやすい飲み物。高価なシャンパーニュは喉もとにつかえてしまうのです。ところがこのフェ・ド・シェーヌは別物。眠くても、調子が悪くても美味しさの記憶が翌朝まで残るのです。びっくりしたのは私の個人的な感想ですが、気の合わない少々苦手な人と飲んでも美味しさを感じるのです。心を素直にしてくれる味わいなのだと思っています。
レストランでワインリストにフェ・ド・シェーヌを見つけたらお疲れの時ほどお飲みになる事をおすすめ致します。