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オーストラリア最高峰ワイナリー【トルブレック】


  慌ただしい2008年でした。9月末から10月末まで約1ヶ月間ヨーロッパのワイン畑を訪れている時にユーロの価格がどんどん下がりはじめました。ヨーロッパに滞在していた時はその恩恵にあずかったわけですが、フランスに入国した9月26日にTGVの中で飲んだシャンパーニュの換算レートは158円。10月16日イタリアのD&Gでスーツを購入した時には132円。最終日フィレンツエの空港でスプマンテを注文したその時ついに127.942円となりました。

  帰国してレストランをオープンしてもお客様はどなたもいらっしゃらないのではないか?飛行機を待つ間、本当に日本に帰りたくない気分でした。そして迎えた11月、お客様方は変わらず、笑顔でワインを飲みにいらして下さいました。2009年は厳しい年になるとおっしゃりながらも仕事の疲れを癒し、心を慰めるワインは必要だったのです。

  そんな時にどんなワインをお勧めするのか……心がほっとするワイン。今回は地球の反対側に飛んでオーストラリアの凄い生産者とワインをご紹介します。

 

  南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーにあるトルブレックに出会ったのはテレビの取材がきっかけでした。現地コーディネーターのお勧めで、とにかく美味しいと評判の高いワイナリー。ワクワクしながら出掛けました。まず目を引いたのは屋外に設置された小さなプールのようなコンクリートで出来た四角い発酵槽。ヨーロッパの近代的設備になれているソムリエールには信じられない光景でした。屋根のない醸造所を初めて見たのですから。テイスティングルームはプレハブの小さなお部屋。工事現場で見かけるあれです。今DVDで2000年当時の収録場面を再生するとテイスティングの箇所で心の底から驚いているのが良く分かります。

  グラスを回すと濃厚な果実の香り、ダークチェリーや黒すぐりのリキュール、そして品よく漂うスパイスはシナモンや黒胡椒、紅茶。他のオーストラリアワインと比較するととってもエレガントな印象。味わいは極上です。こんな原始的なワイナリーでかくも素晴らしいワインに出会うとは!画面の中の私はとろけたチーズのように心をワインに奪われています。その時試飲したワイン、トルブレックのラン・リグは現在引く手あまたで入手困難なワインの一つです。

  ラン・リグはネットで検索すると3万円弱しますが、オーナーで醸造家のデビット・パウエルに由来するカジュアルワイン、私のお勧めウッドカッターズシラーズはその10分の1の価格で購入可能です。彼の前職はきこりで、ワイナリーの名前はその時働いていたスコットランドの森から命名されました。1997年に畑を購入してワイン醸造を始めたのでブドウ樹の平均樹齢は87年、最高で166年の樹も存在しています。ご気分に合わせてお選び下さいませ。

女性ソムリエールの草分け、主に中部地区を中心として活動。現在は、数少ない女性シニア・ソムリエールとして活躍。フランスシャンパーニュのシャンパーニュ協会から「シャンパーニュ騎士賞」授与。 現在も毎年、フランスを中心に世界中のワイン畑を回る。ソムリエールとして講演、講師、テレビ、ラジオ、雑誌等の活動を行う。ワイン&フレンチレストラン「サミュゼ・アン・トゥラヴァイヨン」オーナー。‘05年春より“サンヴァンサン・ワインスクール”を主宰。