
人間の体は不思議です。元気な時は渋くて重い、戦いを挑んでくるような赤ワインを美味しいと感ずるのに、疲れが溜まってくると軽い赤ワインを好みます。そして疲労がピークに達するといつのまにか白ワインばかり飲んでいます。

赤ワインに比べると白ワインはやや地味ですが、楽しさもいっぱいあります。
白ワインの楽しさは色から始まります。淡い黄色は涼しい生産地、濃い黄色は太陽の光が溢れる地域のワインです。そして、その色に黄緑色が重なっていたら生まれたての若いワイン。金色に輝いていたら年を重ねて熟成したワイン。色の濃淡と緑系か金色系かで、生産地域と熟成年数がある程度分かるのです。

香りもブドウ品種や生産地域でさまざまで、レモンやライム系は涼しいところ、洋ナシやリンゴ系は程よい気候、パパイヤやマンゴーなどトロピカルフルーツ系は暑いところで育ったワインによく見つかる香りです。
白ワインの味わいで特徴的なのは酸味。寒さのある地方のワインは酸味が豊か。逆に日照量の多い暑い地方のワインはアルコールが高く酸味は少なくなります。口中に余韻が長く残る、目隠しをしたら赤ワインと間違えそうな力強い白ワインから、さらさらと流れるようにスッキリした白ワインまでバリエーションは豊富です。

私が基本にする白ワインはフランス、ブルゴーニュ地方のシャブリ。ソムリエになりたての頃を思い出しながら久しぶりにブドウ畑を訪問しました。ブルゴーニュ地方の中では飛び石的に離れていてメインの生産地から100キロほど北に位置しています。
キンメリッジと呼ばれる白い石灰質土壌で、昔その地が海であった頃の名残が風化した貝殻として土の中に沢山あるのです。ブドウの状態では感じられないのですが、ワインになってグラスに注がれると土壌からくる独特の香りを見つけることができます。蛎の殻の内側の白い部分のような海の香りがシャブリには漂うのです。シャンパーニュにも近い北の涼しい地方、酸味がぴちぴち口の中ではじけます。真夏の夜にお勧めです。