2005年、愛知県では万国博覧会が開催されましたが、この万国博覧会とワインの関係をご存知ですか?
1855年、フランスの万国博覧会はナポレオン三世の指揮によりパリで開催されました。その背景には1851年にロンドンのハイドパークで開催された第一回ロンドン万国博覧会の大成功があり、フランスの威信をかけての開催でした。
フランスワインの素晴らしさを世界にアピールする為に出展せよとの通達があり、ボルドーの商工会議所が中心となり当時の流通価格にそってグランクリュワインの格付けがなされたのです。
61アイテムの上級ワインは5階級に分けられ、第一級に選ばれたのはCH・マルゴー、CH・ラフィット、CH・ラトゥールにCH・オーブリオン。1973年にCH・ムートンが例外的に格上げされ第一級の仲間入りを果たしたのでこの5つを5大シャトーと呼びます。
CH・ムートンとCH・ラフィットの正式名称は後ろに同じ家名のロートシルトがつき、元をただせば同じユダヤの国際財閥ロスチャイルド家。ドイツのフランクフルトで古物商兼両替商をしていたマイヤー・アムシェルの5人の息子がフランクフルト、ロンドン、パリ、ウイーン、ナポリの主要都市に分散し巨大な金融帝国を築き上げました。ちなみにロスチャイルドは英語読み、ロートシルトはドイツ語読みです。
ロンドン・ロスチャイルドが1853年にCH・ムートンを購入。そののちパリ・ロスチャイルド家は1868年にCH・ラフィットを購入。初代の父マイヤー・アムシェルは5人の息子が5本の矢のように力を合わせて家業を発展させるよう言い残したのですが、その次の世代では葡萄園を隣同士に持つことになった両家は強力なライバルとなりました。
以前は1855年の格付けでCH・ムートンが2級と評価された理由をイギリス系だから差別されたと言われていましたが、当時の流通価格が真実を語っています。1973年に同格となった結果現在の価格はあまり変わりませんが、すこしだけCH・ラフィットの価格が高いようです。
CH・ムートンは予約すればガイドつきでシャトー内の見学が出来、一般のワイン愛好家を広く受け入れています。CH・ラフィットは専門家のみ訪問が許され、期間もブドウ収穫の3ヶ月前までと限定。ずいぶん対照的です。CH・ムートンは毎年ラベルのデザインが変わり有名画家の絵が人目をひきますが、CH・ラフィットは変わりません。ブドウ畑とワインの生産量で比較するとCH・ムートンは75haの畑からグラン・ヴァンは約25000ケース。対してCH・ラフィットは100haの畑からグラン・ヴァンは約18000ケース。
CH・ラフィットはセコンド・ワインを約20,000ケース造っているため栽培面積の広いCH・ラフィットのほうがグラン・ヴァンの生産量が少ないのです。
言い換えればグラン・ヴァンの為にブドウを厳選できるということです。
以前フランス人のお客様に聞いた事があります。「最大限に敬意を表する時にはCH・ラフィットを贈る」と。成功者の証ロスチャイルド財閥、その中でも最高のワインCH・ラフィットという意味でしょうか。