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伝統の生み出す心地よい味わい<ルネ・ルクレール


  原稿の締め切りを迎え、私がデスクに向かっているその場所は、ブドウの収穫真最中のフランス・ブルゴーニュ地方です。

  ワインビジネスの中心地はブルゴーニュの中央に位置するボーヌ。城壁にかこまれた古都ボーヌは多くのワイン生産者がビジネスの拠点としてオフィスを構えています。2008年のブルゴーニュワインの出来栄えがこの収穫時期にかかっている為、生産者にとっては最も忙しく、最も大切な時期です。

  今年は8月の本来暑くなるはずの時期がどこかに飛んでしまい、涼しい気温の中ブドウが生育した為、糖度が上がるまで少し時間がかかりました。美味しいワインに不可欠な要素は、アルコールの元となる糖度と味わいの骨格になる酸。ブドウ顆粒中の糖度が上昇すると、酸房が減少するので、その両方のバランスをはかりながら収穫時期を決定してゆきます。この時期にやってくる訪問者は、はっきり言って招かれざる客。私も美味しいワインが飲みたいので皆さんの仕事の邪魔はしたくないのですが、ブルゴーニュの生産者団体であるConfrerie des chevaliers du Tastevinからchevaliers(シュバリエ)の称号をいただく授賞式の日程に合わせワインツアーをスタートした為に、10月の訪問となってしまったのです。

  今日訪問したワイナリーはジュブレイ・シャンベルタン村に8haの畑を所有する「ルネ・ルクレール」。

  最近は濃厚で樽香がピシリときいたピノ・ノワールが人気ですが、ルネ・ルクレールのワインは自然な果汁の美味しさがそのままワインになった……そんな印象を受けます。

  醸造所で私を出迎えてくれたのは息子のフランソワ・ルクレール。働く人そのものの雰囲気で、素朴な人柄がにじみ出ています。蔵の中で見つけた除梗機も圧搾機も、他ではお目にかかれない貴重なアンティーク。おじいさん、お父さん、そしてフランソワへと大切に受け継がれ、今も活躍しているのです。発酵に必用な酵母は、蔵に住み着く天然酵母。クラシックに、自然に、大切に手造りされるワインだからこそ、遥か遠い日本で飲んでもそのやさしさが飲み手に伝わってくるのでしょう。

     

  村名ワインも1級畑のワインも美味ですが、お勧めは「ジュブレイ・シャンベルタン・コンブ・オー・モワンヌ」平均樹齢60年の古樹から造られるどっしりと深みのある味わいです。香りは華やかに広がりますが、のどもとを通過してゆく時のなめらかな印象と、なぜだかホッとする心地よさをお楽しみ下さいませ。

女性ソムリエールの草分け、主に中部地区を中心として活動。現在は、数少ない女性シニア・ソムリエールとして活躍。フランスシャンパーニュのシャンパーニュ協会から「シャンパーニュ騎士賞」授与。 現在も毎年、フランスを中心に世界中のワイン畑を回る。ソムリエールとして講演、講師、テレビ、ラジオ、雑誌等の活動を行う。ワイン&フレンチレストラン「サミュゼ・アン・トゥラヴァイヨン」オーナー。‘05年春より“サンヴァンサン・ワインスクール”を主宰。