皆様は「神の雫」という漫画をご存知ですか?最近テレビでドラマ化もされて、巷で話題になっています。偉大なるワイン評論家の父が残した20億円分のワインを相続する為に実の息子と養子縁組をしたライバルとが競い合う物語ですが、ワインをテイスティングする時の主人公達の表現方法が大げさで面白いのです。ワイングラスを片手に映画の一場面を語るようにワインの香りや色、そして味わいを言葉にしてゆくとテレビ画面にはその情景が映し出されてゆきます。
私がその漫画に興味を持ったきっかけがあります。ある夜7人の40代前半から50代前半のエリートビジネスマンがご来店。ワインリストを真剣に眺めながら「神の雫」に出てくるワインを飲みたいとおっしゃいました。韓国ではビジネスマン向けに、やや大型のサイズで装丁も豪華なバージョンがあり、それをプレゼントするのがはやっているとの事。
フランスではさらに驚く事がありました。ブルゴーニュ地方のワイン畑を回る時必ず立ち寄る大好きな本屋さんがあります。そこはワインの専門書が豊富で、日本では入手できない貴重な書物を購入するのが目的です。店内の中央奥に山積みされた神の雫を発見した時には目を疑いました。フランス語版の漫画が専門書と一緒に販売されていたのです。
さて、第一話の放送終了後、常連のお客様にエスコートされたご婦人のご注文は「お花畑のようなワイン」でした。ドラマの中では主人公がワインの香りをかいだ瞬間、色とりどりの花が咲き乱れるお花畑の情景が現れ、主人公はその中に呆然と立ちすくんでいるのでした。その感覚をご自身でも体験してみたいとおっしゃるのです。
そのワインの名前はリシュブール。フランス、ブルゴーニュ地方の最も上質な赤ワインを生み出すヴォーヌ・ロマネ村にブドウ畑があり、複数の生産者がその畑を少しずつ所有しています。その中でも最高峰はロマネ・コンティ社の生産するもので、他の生産者を味わいでも価格でも寄せつけません。
ロマネ・コンティ社がヴォーヌ・ロマネ村に所有する畑は6箇所。もちろんトップは社名にもなっているロマネ・コンティです。5000本程度しか生産できない希少品。それ以外にラ・ターシュ、ロマネ・サンヴィヴァン、エシェゾー、グラン・エシェゾー、そしてリシュブールの畑があり、綺羅星のように輝く素晴らしいワインが畑ごとの個性を発揮しながら醸造されているのです。
リシュブールの畑はロマネ・コンティの隣。1メートル50センチの小道がその二つを分けているだけです。お花畑を体験する為にリシュブールを15万円で購入するのは贅沢かもしれませんが、ロマネ・コンティに非常に近い味わいを楽しめる事を知ってお飲みいただければご満足いただけると思うのです。