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ボルドー最高峰ワインの秘密 「シャトー・ラトゥール」


  神が与えた土地。フランスのボルドー地方に超高級ワインのシャトーがかたまって存在する村があります。戦艦も通過できるような幅広いジロンド河のほとりに位置するポイヤック村。シャトー・ムートンロートシルト、シャトー・ラフィットロートシルト、そしてシャトー・ラトゥール、3つも格付け第一級のシャトーが集まっているのです。

ブドウ畑の栽培面積は1190ヘクタール。5級まで含めると18の格付けシャトーが小さな村で最高のワインを醸造しています。ちなみにお隣のサン・テステフ村は栽培面積1200ヘクタールに対して格付けシャトーはたったの5箇所。ポイヤック村の凄さが数字にはっきり表れています。

なにがそんなに凄いのか。ブドウ畑の地面の中を覗いてみると地表に近いところは70万年前のギュンツ氷河期の砂利。その下には粘土の地層があり、この地域での主要ブドウ品種カベルネ・ソーヴィニヨンに最適の土壌があるためです。砂利はお昼間の太陽の光を吸収し地表を暖かく保ちます。そして雨が降っても水はけが良いためブドウに過剰な水分を与える事はありません。砂利の下層に広がる粘土質土壌は逆に雨が少ない時に有効。ブドウ樹の根が地中深く伸び、粘土の層に到達すればそこには水分が保たれているのです。

恵まれた土壌のポイヤック村の中でも最上の区画はシャトー・ラトゥール。ブドウ畑がジロンド河のすぐそばにあるため、河の水面に照りかえされた太陽の光がブドウ畑に降り注ぎます。気温が内陸の畑より高いため雹や霜の害にあう事がほとんどありません。もちろんブドウの生育にも良い影響を与え、糖度の高いブドウが収穫できます。

天候に恵まれなかったオフヴィンテージにもそれなりに安定した品質が維持できる理由がそこにあります。

 シャトー・ラトゥールのブドウ畑を訪問すると名前の由来ともいえる薄いベージュ色の塔が出迎えてくれます。大昔は海賊の襲撃を監視する要塞があり、その名残が畑の区域名になり、シャトーの名前となってゆきました。

  ボルドー地方のワインはブルゴーニュ地方とはワイン造りに大きな違いがあります。赤ワインの場合5種類のブドウ品種を使用する事が許可されており、混ぜ合わせる事で複雑な旨味や香りが産まれます。カベルネ・ソーヴィニヨンがワインの骨格を形造り、カベルネ・フランがエレガントなしなやかさを、そしてメルロがフルーティーな味わいを構成。畑ごとに、品種ごとに収穫、発酵されたワインを試飲してシャトー・ラトゥールとなる原酒が選ばれ、ブレンドされたのちオークの樽の中で18ヶ月熟成させます。シャトー・ラトゥールをお飲みになる時には大西洋に向かってとうとうと流れるジロンド河と下層の粘土質土壌そしてギュンツ氷河期の砂利を想像しながらワイングラスに向き合うと、ブドウ畑の土や砂利の香りがはっきり感じられると思うのです。神が与えた土地の香りを探してみてはいかがですか?

 

女性ソムリエールの草分け、主に中部地区を中心として活動。現在は、数少ない女性シニア・ソムリエールとして活躍。フランスシャンパーニュのシャンパーニュ協会から「シャンパーニュ騎士賞」授与。 現在も毎年、フランスを中心に世界中のワイン畑を回る。ソムリエールとして講演、講師、テレビ、ラジオ、雑誌等の活動を行う。ワイン&フレンチレストラン「サミュゼ・アン・トゥラヴァイヨン」オーナー。‘05年春より“サンヴァンサン・ワインスクール”を主宰。