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ハリーウィンストンと特別なワイン「ペトリュス」


  ワインにまつわるお話は星の数ほど沢山ありますが、今日は宝飾品とワインの素敵なストーリーをお届け致します。

  先日、夜景のきらめく42階のレストランでお仕事した時のお話です。ハリーウィンストンが名古屋にオープン。そのお祝いにエノテーカピンキオーリで特別ディナーと世界3カ国のカベルネ・ソーヴィニヨンの飲み比べのパーティーが開催されました。

  カベルネ・ソーヴィニヨンといえば赤ワイン用のブドウとして1番人気の国際品種です。フランスではボルドー地方でCH・ラトゥール、CH・マルゴー、CH・ラフィット、CH・ムートン、CH・オーブリオンの5大シャトーが有名。

  ところが、ハリーウィンストンにはもっと相応しいワインがあるのです。時代を遡り第二次大戦後のニューヨークが舞台です。

  古風なデザインのラベルに描かれているのは天国の門の鍵をもつ使徒ペテロ。フランス、ボルドー地方でも内陸のポムロール地区に畑があります。1855年の格付けでも対象にならなかったマイナーな生産地域でした。その美味しさがしばしばコンクールで評価されながらも5大シャトーの影にかくれていた、そのワインの名前はペトリュス。

  当時ニューヨークに超高級フランス料理店ラ・パヴィヨンがありました。オーナーのアンリ・ソーレがペトリュスを気に入り顧客にペトリュスを勧めました。そのレストランには、ウインザー公爵家、ケネディ家、オナシスなどニューヨークに集う世界中のVIPが来店。ニューヨークの上流階級に認められた事でペトリュスは世界最高のワインとなったのです。

  さて、もうお分かりですね?ラ・パヴィヨンでペトリュスを飲んだ人々とハリーウィンストンの顧客は重なっているのです。現在ペトリュスの価格は5大シャトーの数倍、ボルドー地方で最も高価なワインとなりました。
 

  ここでワイン通の方は疑問をお持ちでしょう。ペトリュスはブドウ品種がメルロのはず。 当日お出ししたワインはペトリュスが1983年からカリフォルニアで手がけているドミナス。そしてイタリアのティニャネロ、フランスはピション・コンテス・ド・ラランド。1996年ヴィンテージのカベルネ・ソーヴィニヨンは11年の熟成をへて個性的な香りをそれぞれに放っていました。 ドミナスは赤い熟したフルーツと香ばしいバニラ、ティニャネロはトスカーナ地方の大地の香り、ピション・コンテス・ラランドは複雑で動物的、黒いスパイスに紅茶、ドライフラワー、甘味を抜いたプラムジャム。素晴らしいワインの説明を無事終了。お仕事なのに私が1番楽しんでいたかもしれません。 特別な日にはハリーウィンストンの宝飾品で身を飾りペトリュスをお試し下さい。そして気楽に楽しむならカリフォルニアのドミナスをお勧め致します。

女性ソムリエールの草分け、主に中部地区を中心として活動。現在は、数少ない女性シニア・ソムリエールとして活躍。フランスシャンパーニュのシャンパーニュ協会から「シャンパーニュ騎士賞」授与。 現在も毎年、フランスを中心に世界中のワイン畑を回る。ソムリエールとして講演、講師、テレビ、ラジオ、雑誌等の活動を行う。ワイン&フレンチレストラン「サミュゼ・アン・トゥラヴァイヨン」オーナー。‘05年春より“サンヴァンサン・ワインスクール”を主宰。