秋といえば、お酒がひときわおいしいと思う季節。普段は、どちらかというと、ワイン党の私も日本酒はいい、としみじみ思います。
今月は、日本酒に合う大好きな酒の肴をご紹介しましょう。
酒の肴も、たくさんあって迷うところですが、とりあえずこの季節にはこれでしょう、と思うものを選んでみました。
まず、福井の「天辰の汐雲丹」。これを初めていただいたのは、虎ノ門のとある女主人が日本酒大好きではじめた日本酒と肴のお店。箸の先にちょっとつけてなめるように口に入れたとたん、鮮烈な磯の香り。わ~海だわ。日本海の荒々しい海の情景まで甦ってくるようなワイルドな香りと味わい。そして、その後に口の中でまろやかに広がっていく滋味。こんなに好きだと思う汐雲丹は初めてです。
この雲丹、このお店の先祖の天王屋五兵衛が当時の福井藩主、松平治好公に請われて苦心の末開発した「塩蔵法」という保存法で仕上げたそう。桐箱入りで、包装もクラシックだけれど、センスが良いので贈答にも喜ばれそうです。
次に、北海道・函館の「富茂登」のいくら。これは、老舗の「富茂登」という料亭が、函館近海の朝上がりの沖捕り銀鮭の卵のみを使用して、手作業で丁寧に仕込んだもの。1日に限られた量しかできません。そうして赤いダイヤみたいな粒ぞろいで輝きのあるいくらは、新鮮さはもちろんですが、驚くのはその粒の柔らかさ。口に入れるととろりとしたいくらでいっぱいになり、ほどよいタレの漬け具合も好ましくてどんどん進んでしまう。いくらは、ここのが一番美味しいと思います。そのままでも、いくらおろしにしてもお酒に合いますね。
● 天辰