J.Crew(J.クルー)を初めて知ったのは、1990年ごろだ。アウトドアブランドの老舗、L.L.ビーンの本店を取材にメイン州フリーポートへ行った際に見掛けたのがお初。フリーポートの街はL.L.ビーンの巨大な本店を中心に多くのブランドが軒を連ねるアウトレットタウンになっており、そのときに見掛けたのが、J.Crewの買い物袋だった。ネーミングもいいし、あまりにも多くの人が持っているので、L.L.ビーン本店近くにあったアウトレット店を覗いてみた。すると、いわゆるプレッピーテイストの服で、Gapよりもお洒落、ラルフ ローレンよりも買いやすい価格設定で、アメリカ人がいかにも好みそうなラインナップだったと記憶している。
J.Crewがカタログ販売を始めたのは、1983年のこと。ショップ展開を始めたのは、1898年。私が見掛けたのは、ブランド自体がアメリカ人に認知され始めたころだったと思う。知人に聞くと、ニューヨークにもショップがあるというので、マンハッタンに戻ったときにも訪ねてみた。店があるのは、東側、サウスストリートシーポートという場所で、それほど大きな店ではなかったが、洒落た店作り。壁一面に天井近くまで商品が飾られていたように思う。自分用にボタンダウンシャツ、妻にタータンチェックがクレージーパターンになったショート丈のガウンを買い求めた。この冬日本に上陸して話題になっているアバクロンビー&フィッチも向かいにあった(今とは商品はまったく違うが)。
J.Cewの場合、その頃から商品以上に印象的だったのが、その洗練されたカタログ。誌面で展開されている写真すべてが、作品のような出来映え。それも自然なライフスタイルを連想させる写真で、とにかく気持ちがいい。誤解を恐れずにいえば、商品を何倍もよく見せてくれるような写真ばかり。商品写真も、新品をそのまま載せる旧態然としたものではなく、一度洗いをかけたものを自然な感じに畳んで見せたり、いくつかの色のポロシャツなどを何枚も重ねて横から撮ってみせたり、それまでのアメリカ製のカタログとはまったく違ったコンセプトで、完成度の高い、統一されたイメージを持ったものであった。