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70年代のハイテク服、シェラデザインズのマウンテンパーカ


 

 今年はアウトドアスタイルが流行りだそうだが、ここ数年リバイバルしてきたアイテムのひとつに「マウンテンパーカ Mountain Parka」という服がある。オリジナルはアメリカのシェラデザインズが1968年に発表した「オリジナル60/40マウンテンパーカ」だ。名前に「オリジナル」とあるくらいの正真正銘の本物だ。

 

 

70年代のハイテク服、シェラデザインズのマウンテンパーカ

 

 

 1970年代には日本でも一大ブームとなり、マウンテンパーカにジーンズ、ディパックを背負った若者が街中にあふれたものだった。この服、名前にあるように山用などのアウトドアスポーツ向けに作られた服であることはいうまでもないが、各所に大型のポケットが付き、それで収納量がちょっとしたバッグ並み。フロントのポケットの蓋には着脱が容易なベルクロ、つまりマジックテープが、さらにサイドにはハンドウォーマーまで付いている。フロントは、YKKのNo10大型ナイロンジッパーにドットボタンのダブル仕様で、手袋をしていても開けられるようにドローコード付き……。

 

 

70年代のハイテク服、シェラデザインズのマウンテンパーカ

 

 

 まるで車の性能でも解説するようなスペックやデザインが当時の男心をくすぐったわけだが、それ以上にこの服の魅力を増加させたが、品名にもある「60/40」の素材。これはコットン60%にナイロン40%で織られた素材という意味。正確にはコットンを横糸で58%、ナイロンを縦糸で42%を使った素材で、摩擦に強い、肌触りが良い、夏に強いといったコットンの良さと、引っ張りに強い、水に強い、柔らかい、軽いといったナイロンの良さを併せ持った当時としてはハイテクな素材だ。この素材、その後、すぐに登場してきたゴアテックスと違って完全な防水機能は持ってはいなかったので、アウトドア素材としてはその後発達はしていかなかったが、街中のウエアとしては十分な機能性を持っていることは間違いないし、今ではそのローテクな風合いが逆にウケているという話もある。

 

 

70年代のハイテク服、シェラデザインズのマウンテンパーカ

 

 

 シェラデザインズは、1965年、アメリカ西海岸のバークレーでスタートしたブランド。ジョージ・マークスとボブ・スワンソンというバークレーのスキーハットというアウトドアショップに勤める若者二人が、あるとき海で暴風雨に遭遇、このときの経験から「命を託せるウエア」を作ろうと自宅の倉庫でミシンを踏み考案したのがこのパーカだ。バリエーションこそ増えてはいるが、40年以上も基本的なデザインを変えていないのもすごいところ。ミリタリーウエア同様、必要にして生まれたデザインだから、もはや変更の余地がない程、完成されているのだろう。事実、私も長年着ているが不満を感じる部分はほとんどない。

 

 

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