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靴を作るために生まれたような人に出会った


 

 昔、アメリカのウィスコンシン州のベルギーにあるシューメーカー、アレン・エドモンズの本社に伺ったことがある。アレン・エドモンズは頑ななまでに「メイド・イン・USA」を守り続ける会社で、履き慣らしのいらない靴として有名。ニューヨークのエグゼクティブたちが愛用する靴だが、本社も工場もウィスコンシン州にある。いくつかある工場のひとつにリペアを専門に扱う工場があり、アメリカ全国から膨大な数の靴が集められ、修理されていた。一足、一足、丁寧に修理され、新品のように磨き上げられて再度出荷されている光景を見ていたら、広報の女性が「靴のリペアは靴をイチから作るより大変なんですよ」と力説していたが、本当にその通り、靴を壊さないように縫い糸を切り、接着剤などをはがし、元通りに戻すプロセスは気が遠くなるような作業だ。

 

靴を作るために生まれたような人に出会った

 昨年暮れ、とあるパーティにお会いしたのが埼玉・川口で靴の工房を営む五宝賢太郎さん。紹介してくださった方は「靴の修理をお願いしているんで」とおっしゃったので、勝手に五宝さんが店で靴をリペアされている姿を想像して、お店に伺う約束を取り付けてしまった。靴の修理自体はそれほど珍しいものでもないが、チェーン展開でやっているところがほとんどだし、こんな若い方が靴の修理をやられていることにも非常に興味を覚えたからだ。

 京浜東北線の蕨駅の東口を下りて5分あまり、昔ながらの商店街風の通りに五宝さんのお店「時代屋」があった。伺う前にリサーチを、と彼のHPもチェックしていたので、五宝さんの専門はオーダーで靴を作ることで、靴の「お直し」を主にやられているというのは私のまったくの勘違いであることはわかっていたが、失礼を承知で書かせていただくと、店の作りは、昔あった下町の靴屋さん風であり、「時代屋」という名前もしっくりと来る店構え。店頭にオーダーのサンプル靴が並んでいるが、都内によくあるオーダー専門店のようなお洒落なアトリエ的な雰囲気でもなく、敷居の高さも感じられない。そんなお店の扉を開けると、パーティの夜以来の再会になるが、人懐っこい五宝さんの笑顔が現れた。

 

 店内は、工房らしく靴の製作のためのミシンが数台並び、製作や修理途中の靴が至るところに並んでいる。修理途中の靴の中にはオールデンやトリッカーズなどの有名ブランドの靴も多数。五宝さんを紹介してくださった人をはじめ、靴好きな人がたくさん集まって来ている場所であることはその様子からも感じ取れたが、五宝さんの口から語られるエピソードから察すると、彼の靴好きのレベルは並大抵ではない。

 

 

靴を作るために生まれたような人に出会った

 

 

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靴を作るために生まれたような人に出会った

歴史を感じる店の外観。看板には五宝さんのブランドである「Re:Re:」の名前も。
靴工房 時代屋
埼玉県川口市芝5-6-13 ☎048-261-9241
営業時間/8:00〜20:00 定休日/日曜
http://www.hack.co.jp/goho/