来月にも、戦いの火ぶたが切って落とされようとしているトヨタ・プリウスとホンダ・インサイトの「ハイブリッドカー一騎打ち」。勝敗の行方を、世間は固唾を飲んで見守っている。
戦いは、すでに2月から始まっていた。フルモデルチェンジしたインサイトは、前評判だけでなく、実際のセールスも滑り出しから絶好調で、1ヶ月後には早くも受注が2万台に届こうとしていた。
それを見てなのか当初からの予定かはわからないが、12年前に史上初のハイブリッドカー・プリウスを世に送り出したトヨタが、インサイトに待ったを掛けた。5月に新型が投入される予定のプリウスの価格が、205万円からに設定されたのだ。インサイトのそれが189万円から、ということを大いに意識した結果ではないか。
トヨタは、もうひとつインサイト対策とも取れる奇策を繰り出した。旧型の並売である。タクシー用などのコマーシャルユースらしいのだが、新旧並売はあまり例がない。それだけ、ハイブリッドのパイオニアであるトヨタをしてもインサイトの好調ぶりを無視できないということなのだろう。
今度のインサイトは、よくできている。バッテリーとECU(エンジンとモーターを制御するコンピューターユニット)を小型軽量化し、アイドリングストップなど走行状況に応じてキメ細かく行うことによって、省燃費を実現している。1.3リッターというエンジン排気量にシンプルな電気モーターと制御システムを組み込み、燃費を稼ごうという発想だ。
対照的に、プリウスはエンジン排気量をこれまでの1.5リッターから1.8リッターに拡大し、凝ったハイブリッドシステムを採用し、電気モーターだけで走らせられる距離を伸ばした。カタログ値の燃費では、噂に上がっているプリウスの数値が大きく外れていないとすれば、プリウスの方が優れているようだ。
では、インサイトがクルマとして劣っているのかというと、そうではない。車両価格差、実走行での燃費(オーナー参加型の燃費ランキングがホンダのサイトで公開されている)、走行フィーリング、乗り方などによって、一概には決められないからだ。要は、ハイブリッドカーに、クルマに何を求めるか、だ。
燃費が良く、価格も安く、オーソドックスなガソリン車の延長線上にあるハイブリッドカーを求めるならばインサイトがふさわしいだろう。だが、ハイブリッドカーに、好燃費に加えて“新しモノ感”を求めるならば、プリウスなのかもしれない。
現時点で断言できるのは、インサイトは「ハイブリッドをあまり意識しなくて済む、よくできた小型車」だ。インテリアの造形に、“新しモノ感”がもう少し欲しかった。
いずれにせよ、新型プリウスについても、またご報告したい。