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H・モーザーMAYU


端正なマスクをしていて、機構面についても語りどころ満載の高級ドレスウォッチといえば「H・モーザー」(H.MOSER & Cie)。現在のところ、唯一国内で買うことができるのが『マユ』(写真)で、気品があってとても美しいと思います。後述しますが、メーカーとしてのスタンスやブランド誕生の背景を考えると、とてもリーズナブルに感じます。

  さて、ブランド名の「モーザー」とは、時計師でありビジネスマンでもあったハインリッヒ・モーザー(1805年12月12日生まれ)に由来。1826年、彼が設立したH.モーザー社の名声はドイツとの国境に近いスイス・シャフハウゼンから各国に広がり、ロシア帝国宮廷、中国、フランス、アメリカに販路を開いたそうです。近世になり、ハインリッヒ・モーザーのひ孫に当たるロジャー・ニコラス・バルジガーが、時計の専門家、投資家グループと提携、こうして2002年9月、シャフハウゼンというライン川沿いの街で創業した「モーザー・シャフハウゼン株式会社」が母体となり、元IWCの技術部責任者を務めたユルゲン・ラング博士による再度の国際登録を経て、再興したのが新生「H・モーザー」(2002年設立)です。また、ムーブメントを自社開発するために、ハリー・ウインストンの超複雑時計『オーパス7』を手掛けた独立時計師のアンドレアス・ストレーラーを招いています。

こうしてハインリッヒ・モーザー生誕200年を迎えた2005年、伝統に忠実で、しかも自社開発による革新機能が盛り込まれた、各シリーズの発表に至ります。翌年の世界時計博「バーゼル・ワールド2006」において『モーザー・パーペチュアル1』、『モナード・デイト』、『モナード』、現在国内展開中の『マユ』がお披露目。世界初のフラッシュカレンダーを備えた『モーザー・パーペチュアル1』は、「ジュネーブと時計グランプリ」複雑時計部門第1位を獲得。フラッシュカレンダーとは、デイト表示で2月28日から3月1日に変わる際に、「28」の後に直接「1」を表示するメカニズムで、閏年表示もプッシュボタンで操作可能となります。さらに革新的な「ダブル・プル・クラウン・システム」(リュウズの二重引き出し装置)を実用化。これは時刻、カレンダー修正といったリュウズ操作の正確な選択を容易にしてくれる画期的な機構です。

機能面における革新はまだまだ続き、古典的な重力補正装置「トゥールビヨン」とは異なるアプローチによって、時計の心臓部である「テンプ」が姿勢差などの干渉を受けにくくする「ダブルスパイラル・エスケープメント」を搭載するトノー型ケース・コレクション『ヘンリー・ダブルヘアスプリング』をバーゼル・ワールド2007で発表。これは調速機構を刷新したもので、重心誤差を排除するエスケープメントを結合させたシステムにより、2本の自己補正型アンチマグネチック・スパイラルスプリングが相対して振幅作動。国内でも今季バーゼル・ワールド以降に、このニューモデルを含む全シリーズのお披露目、国内価格発表が行われたため、入荷が待たれている状況です。

なおH・モーザーの取り扱いは、東日本では「M&R銀座店」、西日本では神戸にある「カミネ」の2店。各店、H・モーザーの反響は、とても大きいそうです。
 
H・モーザーMAYU
18KRGケース。144万9000円
 
H・モーザーMAYU
18KWGケース。144万9000円
 
モーザー・ムーブメント「Cal.(キャリバー)HMC321」(直径32㎜)は、モーザー方式と呼ばれるカナというパーツが噛み合う独自の歯車式。硬化純金製のアンクルを使用しているのは、H.モーザーだけとされます。ゼンマイを収納する香箱には、全世界での使用例が稀な、摩耗が少ない傘歯車を使用。手巻き。
※ほかにPt(プラチナ)、Pa(パラジウム)ケース、ブラックラッカー、ホワイトラッカー・ダイヤルなどのバリエーションが用意されています。

(問)東邦時計
(℡)03-3833-9601

松田朗 Akira Matsuda

ジャーナリスト まつだ あきら。東京ニュース通信社特派記者。雑誌『TVガイド』、『TVTaro』、『TVBros』などに携わる。1992年より雑誌『Begin』で時計の広告タイアップ記事を、『モノマガジン』、『VOCE』、『POPEYE』、『クールトランス』の時計特集などを。現在『時計Begin』での新連載、『ブルータス』などでの時計特集を準備。正規時計店の広告、タレントを起用するイベントなども手掛ける。