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ヤコブセン【アリンコチェア】編


先日、北欧の3カ国へ出張に行ってきました。

北欧は各国にそれぞれの巨匠デザイナーたちがいます。しかも、歩いているだけで彼らのデザインに出会います。今もなお、人々から変わらず愛され続けているもの。「ずっといいもの」なのです。

最初に訪れた国、デンマーク。まずはヤコブセンをご紹介します。

いつも一人で行くことが多いのですが、今回はJamoの仲間たちと4人。旅仲間がいるというのはとても楽しいものでした。


アリンコチェア

  ヤコブセンのデザインした中で一番好きで、身近に思える椅子です。ウエストのくびれのような、きゅっとしまった背は狭い空間にも馴染みやすく、丸い頭を強調してくれるので空間に色気も出せます。積み重ねることもできるので、ダイニングだけでなく、ミーティングスペースにも置くことができ、コーディネート次第でどんな風にも使える椅子です。今は色も多く選べるので、どんな家具とでも楽しむことができます。

  旅の道中、アンティークショップにも数件訪れましたが、各ショップに必ずといってもいいほど置いてあるのがオリジナルのアリンコチェア。名前の通りアリの形に似ているからなのですが、1952年に誕生した時は3本脚でした。コレクターの方や家具好きの方は、だいたいこの3本チェアのことを皆さん「いいね」とおっしゃいます。4本脚になったのは1980年以降のことです。

画像提供:フリッツ・ハンセン http://www.fritzhansen.com/jp

  イームズのアルミナムチェアなど、他にもいくつか脚が増えたものがありますが、少々複雑な気分です。安全性の問題や、輸出先の多様さからだとは思うのですが、やっぱりオリジナルの方が美しいと思います。デザインが生まれたときの素材や形がやっぱり一番美しい。そのデザイナーの理想に一番近いものだから。

  使い勝手が悪いものでも、使い方を気をつけたらまったく問題ないものもたくさんあります。デザインを制限せず、ものを選ぶときの選択肢 が多い方が良いと思います。それは国によって基準が違うので、いろんな国を訪れるとそういう生活習慣のようなものも肌で感じることができ、大変興味深いです。

  例えば、ヨーロッパには日本で問題になり、使用が激減された回転扉が街中に溢れていますし、このデンマークでは貴重な宝物がたくさん展示されているミュージアムの中の人のいない空間にも、キャンドルが美しく灯っているのです。

  文化という、その国の誰もが扱い方を知っていて、小さな子供にもまわりの大人がしっかりと伝えるので相当危険なことであったりしない限り、問題にはなりません。自己責任に対する、国としての価値観の違いもあるけど、最近はそういう国ごとの文化の違いがあやふやになってきている気がします。物だけ入ってきて、その背景や文化、習慣が入ってこないから問題が起こってしまうように思います。

  将来があまりつまらない世界にならないように、私としてはできるだけ個人の責任で日々生活をして、デザインの幅は狭めたくない、と思ってしまいます。そしてなにか新しいデザインに出会った時は、まわりの環境や時代など、ひっくるめて理解できるようになりたいと思います。