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ふつうの部屋に住む


  私は「ふつう」という言葉が好きなので、「ふつう」についてよく考えています。普通のものをずっとつくっていたいからです。そのため仕事では、いつも私の中の「ふつう」を表現します。もし私の中の「ふつう」が、世の中の「ふつう」と言われていることではなかったら、それは戦いです(笑)。

  なぜ“戦い”なのかというと、先日私の友人から、イタリアの建築家・Renzo Piano(レンゾ・ピアノ)がインタビューの中で、“デザインは戦いだ!”と言っていたというのを聞いたばかりだから。自分の中の「ふつう」をつくることは、絵を描くというより、現状と戦うってことらしいです。なるほど……、そう思えた言葉だったので引用してみました……。

  さて、前回ARFLEX(アルフレックス)のベッドを紹介したときに少し触れた、弊社が内装デザインを担当した賃貸マンションのモデルルームのスナップが出来ました。

  テーマは前回お話しましたが、簡単に言うと「世界中どこにでもありそうな、ふつうの部屋」です。世界中というのがポイントですね、日本ではこういう賃貸のお部屋はあんまり見たことがありませんが……。

  写真のタイプは1LDKの小さめの部屋。ルーフバルコニー付きで約65㎡の部屋もあります。とてもシンプルなので、どんなライフスタイルの方でもしっくりと合うと思います。2つモデルルームがあれば、もうひとつはモダンな家具で揃えたかったところですが……。

  リビングダイニング

ペンダントランプもカップボードもすべて後で入れたものなので、入居される際はなにも付いていません。入居後、お好きなもので楽しんでいただければと思います。本来天井に近い壁に付けられる空調器(クーラー)や、余計な設備をなくし、とにかく美しい天井を目指しました。左奥に見えるのはベッドルーム。

キッチン : シンプルです。    
 

  ベッドルーム

ガラスの窓の奥はベッドルーム。ウォークインクローゼット付き。あまり広くない部屋をどう開放感を与えるか……と強引に付けた、開かない窓です(笑)。 でも朝、目を覚ましたらキッチンで朝食をつくっていてくれる姿が見られると思うと素敵すぎですよね。

  パウダールーム

こちらもシンプルにつくりました。

  私の自宅も賃貸で、引っ越しをしたのが1年前。そのときにあまりに「ふつう」がなくてずいぶん困りました。テイストはもちろん、特に建材の質や日当り、間取りなど、住む人のことをことごとく軽視しているように感じてなりませんでした。うちには愛犬もいるので、なおさら困難でした。

  きっと、部屋を選ぶ方ひとりひとりが、世の中の流れや常識にとらわれず、どんな生活をしたいかを素直に思い描き、ご自身の「ふつう」を妥協なく探したら、もっといいお部屋が日本にも増えるのだと思っています。

  根気よく探せばありますよ~。