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George Nelson(ジョージ・ネルソン)氏が生まれて100年!


  家具見本市といえばミラノで毎年4月に行われるサローネがとても有名ですが、今回は、それよりも先駆けて世界に向けて新作が発表できると言われている、ドイツのケルンで行われる少し小さな規模の見本市に行ってきました。この街はケルッシュビールが有名で、とても親切であたたかい街です。

  見本市はとりあえず置いておき(笑)、まずは街めぐり。見どころはふたつ。完成まで600年もの歳月(途中200年も中断しているけど!)をかけたと言われるゴシック様式の巨大な世界遺産Cologne Cathedral(ケルン大聖堂)と、スイス建築家、Peter Zumthor(ピーター・ズントー)が2年前にデザインし、こちらも7年かけて実現させたKOLUMBA MUSEUM(コルンバ美術館)。

  15年前に訪れたときとまったく変わらない大聖堂の佇まいにノスタルジックな気持ちがわき上がり、ジーン……涙を浮かべつつも「あとでね~」と、2007年にオープンしたこの新名所、KOLUMBAへ直行!

  運悪く寒い雨の日で、傘を持つ手もかじかみ下を向いての到着となり……。でも、KOLUMBAという文字が見えたので見上げると……。

「わぁ~!!!!」

  第一次世界大戦で破壊された教会の一部と、モダン建築が見事に一体化した厳かな建物と対面。透き通った迫力というのでしょうか。イヤな圧力も重々しさも感じない、大きくて軽やかで、時間や環境に敬意が感じられる建築。ぼんやりした曇り空と地元の石を積んだ壁が、あやふやに色で馴染み、不思議な感覚を覚えます。

  その土地で取れる土や木で造られた建物は、目にも感覚にもすんなり入ってきて気持ちが落ちつきます。そして、そういう静かな美しさは、歴史や様式や形を簡単にひとつに融合させてしまいます。KOLUMBAの成り立ちのコンセプトにしてこの建築……うーむ、深いなぁ……。



  中へ入ってもその感動は続きます。細かい石の隙間から漏れる光の中、ローマン時代の遺跡の上に掛かる橋を渡ったあと、上のフロアにあがると展示物が映えるモダンで大胆な空間構成に変わります。

  ケルン大司教の廃墟の中から救い出したという教会の宝物と、現代美術が同じ扱いで並んでいて、作品のキャプションや名前も空間には出てきません。チケット売り場で渡された小さなリーフレットを各自で持って歩いてまわります。そのため美術館の中は驚く程整然としていて、目の前の作品と向かい会うことができます。

  NY出身のアーティストの映像作品の隣に、半分朽ちたマリア像が飾られているのです。他ではありえないですよね。ただ、どちらも“本物”で、深く考えさせられる対象なので、人々はひとつひとつの展示に同じように心を動かされ、命や人生や歴史、それぞれの想いに深く入りこんでいきます。

  オープンする際、物議をかもしたKOLUMBAの存在について、最終的にドイツのカトリック教会では、教会離れが進む人々に向かい「アートを通して神の存在を感じてくれればいいと思うのです」と発言されたと聞きました。

“one love” です!

  ドイツの国ってとても前衛的なんだなぁと驚きながら、深く静かに美術館のすべて、光からディティールまでを楽しむことができました。 ドイツとスイスのデザインに、改めて興味をもった訪れとなりました。