もうひとつは、乾きもの。とはいえ、なるべく早く食べていただきたいのは変わらないのですが…･･･。

　あらためて東京発の「東京名物ってなんだろう」と考えたら、浅草海苔、そして、おせんべいかもしれない、と思いました。もちろん、人気パティシエのケーキや、フランス直送のショコラなど、最近でこそ、東京の名物は多々あるかもしれませんが……。

　そしておせんべいも、もちろん日本中おいしいものがありますが、東京のおせんべいは「粋」だと思うのです。そういう点で東京名物、といってもいいかな、と。

　ちなみに、浅草海苔というのは、以前、京都の知人に東京からお土産というと何が喜ばれるの？ と、たずねたところ、「それは、お海苔でしょう。東京の名物だと思っているわよ」と言われました。それからは、好物をよく存じ上げていない京都の方には、お海苔をお贈りします。

　そうそう、おせんべいの話。おせんべいは、九段・一口坂の「さかぐち」のが好きでよく差し上げます。こちらは、支店もなくここだけの販売というのがいいのです。おせんべいの命は、作りたてだと思うので。しけてしっとりしたおせんべいくらい悲しいものはないですから。

　「さかぐち」の中でも、特選海苔巻き「京にしき」というのがいいのです。おしょうゆ味の薄いおせんべいに、海苔がしっかり巻いてあって、箱をあけるとそれがぎっしり詰まっていてほとんど黒い、のです。まず見た目から感動的。そして、粋な薄いおせんべいに、海苔がしっかり巻いてある。これこそ、東京名物あらずしてなんぞや、という感じです。

　開けた後にしけないように保存用として専用のビニール袋がついているのも、おせんべいの真髄がわかっているからこそ。

　香ばしいほうじ茶を大ぶりの湯飲みにたっぷり淹れて、この京にしきをつまむのは、ほっこりするお茶の時間。年末の忙しいひとときに、その楽しさをおすそ分けしたいと思います。