最近若い人たちの間では昼のフォーマルな行事、特に結婚式などの慶事にはダークスーツでいく場合が増えています。ダークスーツをフォーマルに着こなすには、ワイシャツの襟、襟元のVゾーン、カフス、胸の白いハンカチなどアクセントとしていかすのがコツです。ワイシャツにはコンバーチブルカフスといって、ボタンもカフスボタンも両方使えるシャツに、メタリックなカフスリンクをつけます。襟型はソフトカラーのほか、タブカラーやピンホールカラーでも大丈夫です。ネクタイは、同系濃色の落ち着いた縞柄やクレスト(紋章)などがいいと思います。
また、蝶ネクタイにしめかえるのもイメージが一変しておしゃれです。ポケットチーフは“スリーピーク(3つ山)”なら先端をあまり出さず“パットフド”なら大胆に出すのが効果的です。靴、靴下、サスペンダーも黒で統一しますが、ベストは明るいグレーがいいと思います。靴は、黒のプレーンな爪先のものがよく、Uチップや金具の付いたスリッポンもよいでしょう。
次に、ブラックスーツについて説明します。日本では「ブラックスーツが一着あれば、ネクタイを白から黒に変えるだけで結婚式にも葬式にも通用する」と言われていますが、これは戦後のまだ貧しい時代である昭和20年代、30年代に既製服の礼服メーカーが、そのように宣伝して売っていたためです。しかし、悲しみを一杯吸い込んだ服に塩をパッパッとかけたら翌日は慶事の服に早変わりする、というのは貧しい感じがします。黒い服はお葬式用にして、略礼服なら濃紺やダークグレーのダークスーツをフォーマルとして着こなすほうがすっきりして、国際的にも立派に通用することを理解していただきたいと思います。
ただし、学生さんや社会人1、2年生の方は、まだ経済的に自立していませんので、その方たちに説明したいと思います。ブラックスーツはダブルとシングルがありますが、シングルの方が若い感覚になります。襟はピークドラペル(剣襟)で、1つボタン、ノーベントが正式です。シャツは白のダブルカフスが基本で、ネクタイはシルバーグレー、黒と白の縞模様、小さなペーズリー柄なども粋です。ブラックスーツを三つ揃いにし、黒白千鳥格子のベストを着用すると、フォーマル効果がグーンと上がります。淡いピンク、グレー、ブルーなどの蝶タイをしめると、また一層華やかな雰囲気になります。