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英国式フォーマルウェア【モーニングコートとディレクターズスーツ】


  フォーマルウェアを着用するには、TPOが重要になります。T(タイム/時間)、P(プレイス/場所)、O(オケージョン/場合・行事)。つまりフォーマルウェアには、ルールがあります。世界に通用する英国式フォーマルウェアの着こなしをご紹介します。


  ではまずモーニングコートをご説明します。モーニングコートは、昼間の正礼服です。冠婚葬祭すべてに向くため万能礼服として、夜間の結婚披露宴に着ている人を見かけますが、これは、間違いです。欧米人が見たら、びっくりするでしょう。


  モーニングの素材は、タキシードクロスが一般的ですが、秋~冬~春物にはバラシャ、夏物にはモヘアを使用します。色は上着が黒で、スラックスは黒とグレーの縞模様です。この縞が太ければ若い印象になり、細めの縞はシニア向けになります。スラックスの裾はシングルで、裾の後ろの方を長くします。一般にいう「モーニングカット」は、このモーニングからきています。


  シャツは、白のウイングカラー(立襟)かレギュラーカラーで、袖口はダブルカフスが基本です。

  ベストは上着と共布の黒が普通ですが、祝儀の場合はグレーフランネルか、夏にはグレーのコットンのファンシーベストを用いるのも現代的で、若々しくみえます。黒ベストには縁に白襟が付いていますが、これは慶事用で、弔辞の時は、はずすのが原則です。


  ネクタイは、黒と白の縞柄か、無地の白やシルバーグレーです。


  葬儀の時は、黒無地にします。モーニングでは真珠のネクタイピン、カフスボタンは、真珠かシルバー系の金属系でタイタックとセットものが安心です。靴下は黒無地。靴は、カーフ(仔牛の革)かキッド(仔山羊の革)の紐付きかスリッポンでもよいと思います。


  モーニングコートは、主催者側が着用しますが、次に招待側が着用するディレクターズスーツについて説明します。


  ディレクターズスーツは、ビジネスマンなら一着は持っているブラックスーツの上着に、モーニング用の縞のスラックスを組み合わせたものです。ディレクターには取締役、重役の意味があるように会社の創立○周年記念パーティーとか、会社関係のさまざまな儀式や行事の際、社長や重役がディレクターズスーツを着用するとその場の雰囲気が引き締まる、ひと味違った格調の高さを感じさせるスーツです。結婚式の披露宴などにも、もちろん着用できます。

株式会社神谷ガーメント 代表取締役社長。イギリス サヴィル・ロウのキルガーフレンチ&スタンバリー(現キルガー)でチーフカッターを務め、帰国後、西武百貨店顧問デザイナーを経て、株式会社テーラー神谷(現株式会社神谷ガーメント)の社長に就任。就任後は若い人でもオーダースーツが楽しめる「ニューオーダー」の開始やNHK総合テレビ月曜ドラマ「オーダーメイド」でテーラー指導、衣装製作さらには出演など、精力的に業界の活性に尽力している。
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