オーダースーツの注文を受ける場合、既製服にはないデザインやディテールがたくさんあります。
まずベントをどれにするのか。ノーベント、シングルベント、サイドベンツ、それとアイビーファンが喜ぶセンターフックベントがあります。ベントとはご存知の方も多いかと思いますが、動きやすいように上着の裾に入れられた切れ込みのことをいいます。
それとラペル(上着の衿の下衿。ちなみに上衿はカラーといい、この境目をゴージラインといいます)に関しては、先のとがったピークドラペル、魚の口のようなフィッシュ・マウスラペル、先が丸いクローバーラペル、それと最近流行しています、ゴージラインより少し上がったセミピークドラペル、その他いくつかあります。
ジャケットのフラップ(ポケットの蓋)は少し斜めポケットにした方が、シルエットがきれいに見えます。また、タキシードのようにフラップなしで両玉縁、片玉縁(パイピングともいい、テープや布などで縁を装飾をしたもの)のデザインも出来ます。この場合もやはり、スランティング(斜め)ポケットにしたほうが、かっこいいと思います。
そして袖口のボタンについては3つにするか、重ねボタンにするか、本開きにするか、または1つだけにするとか、ボタンホールの穴糸の色を変えるとか説明しきれないくらいあります。
それとジャケットの見える部分だけではありません。裏地の色とデザインをどうするかもオーダースーツでは選ぶことができます。例えば紺のスーツを仕立てる場合、同系色の紺色、もしくはエンジカラー、レッドカラー、グリーンカラーなど、好みの色を選ぶことが出来ます。
次に内ポケットについても自分の思い通りに決定することができます。特に男性は携帯電話や名刺入れなどを内ポケットに入れる方が多いため、そのサイズを考慮して作っていきます。例えば少し長めのサイフや手帳を内ポケットに入れる方がいらっしゃいます。しかしスーツはウエストラインが決め手です。内ポケットの底はウエストラインで留めて、サイフなどが上の方に入るようにして、内ポケットのフラップを留めるようにしてみましょう。そうすれば美しいウエストラインを損なうことはないでしょう。このほかにもチケットポケット、少し幅広なペンポケットなど、すべて顧客様がいつも使用しているサイフのサイズや携帯電話の大きさも考慮して内ポケットを作っていきます。
オーダースーツのデザインとディテールは、一度やったらやめられない。自分だけの世界でたった1着のスーツです。