TOP > Fashion > 『老舗テーラーのスーツ塾』 > ネクタイの基本ルール


  皆さんはネクタイを購入する際、何を基準にして選びますか?まず柄とプライスかもしれませんね。私共も昔、名古屋駅前メイチカ店の店頭で1本1,000円のネクタイを300本並べたら、1ヶ月に何回転もして、こちらの方がびっくりするくらい売れました。女性客が7割で、ご主人や恋人に購入された方が多かったのです。現在では私共の本店のでは、3千円、5千円、1万円のネクタイを販売しています。さすが本格的な男性は、自分で選んで購入されます。


  ではまず、正しいネクタイの長さを説明します。以外に思われるかもしれませんが、ネクタイは柄より長さを優先して選択すべきです。日本の伝統的なネクタイの長さは138センチから140センチ。日本のネクタイが138センチから140センチしかない理由は、バイアス(斜め裁断)で45度にカットした場合、その数字が最も無駄がないからなのです。50センチ幅の素材からバイアスカットし、効率的な数字を探っていくと138センチにたどりつくのです。イタリアでは140センチで、これは70センチ幅からバイアスカットするためです。私共でも、イタリアのフィレンツェで行われる、ピティウオモの展示会でネクタイを発注する際、70センチ幅のシルクの柄から選択するんですが、その様にバイアスで取るため、1柄4本ずつになるので販売する時に多少難しい問題がでるんですね。

  正しいネクタイの長さはウエストラインまでで、ベストをする人はベルトの上に大剣の先がかかる程度にします。時々、短いネクタイをしている人がいますが、大変貧相に見えます。また長すぎるネクタイはだらしなく見えるので注意しましょう。

  次にネクタイを選ぶ時のポイントをお教えましょう。大剣の先端を確認し、三角形になった端を内側に折り曲げて正しい三角形ができれば、正しいバイアスで裁断された証拠です。

  次にクオリティの高いシルクは、強く握ってもシワはすぐに戻ります。また、小剣の端を軽く持ち、ネクタイを上から吊るすようなかたちで軽く数回振ってみますと、上質のネクタイは、ほとんどねじれません。

  では最後に皆さんはなぜネクタイをするのでしょう?それは相手に対しての尊敬の念を示すためです。取引先の所へ挨拶に行く時、銀行の役員や支店長のところへ面談に行く際、あなたはノーネクタイで行きますか?答えはノーです。私も取引先が商品を売り込みに来る時、ノーネクタイで面談に来たら、すみやかにお帰りいただきます。これは世界の常識ですから、よく覚えておいていただきたいと思います。
株式会社神谷ガーメント 代表取締役社長。イギリス サヴィル・ロウのキルガーフレンチ&スタンバリー(現キルガー)でチーフカッターを務め、帰国後、西武百貨店顧問デザイナーを経て、株式会社テーラー神谷(現株式会社神谷ガーメント)の社長に就任。就任後は若い人でもオーダースーツが楽しめる「ニューオーダー」の開始やNHK総合テレビ月曜ドラマ「オーダーメイド」でテーラー指導、衣装製作さらには出演など、精力的に業界の活性に尽力している。
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