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クラシックスタイルを極める【スラックスの着こなし】


  ジーンズが流行り出した頃から、カジュアルなスラックス(パンツ)をはじめとして、スーツのスラックスも股上が浅くなり、スラックスはウエストラインより下のヒップライン、具体的には、腰骨のあたりにかろうじて引っかけて、はかれるようになってしまいました。


  これに対してクラシックなスラックスは、ウエストのくびれにしっかりとフィットし、股上も深いスラックスのことを言います。安定感があり、下半身のプロポーションを美しく引き締めてくれます。

  股上の浅いスラックスにより、サスペンダー(ズボン吊り)は用いられなくなってしまいましたが、クラシックで正しい男のスタイルは、股上が深いスラックスをサスペンダーで吊ります。ただサスペンダーは、肩が凝るという欠点をもっているため、敬遠する人が多くいます。しかしサスペンダーの代用としてベルトを用いるのは、クラシックとは言い難いです。スーツスタイルのシルエットは、常に上から下へ流れがあり、ウエストラインにベルトを巻くと、結果としてその流れを横に二つに断ち切ってしまうのです。もし、正統なクラシックを装おうとするのであれば、スラックスはベルトレス・スタイルを選択しましょう。

  フォーマルウエアのモーニング・コート、タキシード、イブニングコート(燕尾服)のスラックスはすべて、ベルトレスで股上が深く、サスペンダーを使用します。最近、男性でも美脚パンツが流行していますが、実はサスペンダーを使用すれば、前身のラインが美しく出るわけです。そしてサスペンダーで吊る分、股下を1.5センチから2.0センチ長くしますと、脚が長く見え、かっこよくなるわけです。

  クラシックなスラックスの前プリーツ(タック)は、左右に2本ずつが原則で、プリーツの襞(ひだ)が、外にむいているものがありますが、クラシックを体現するプリーツは外側に向いています。しかし、最近のファッション傾向はノープリーツかワンプリーツになってきて、細身のスラックスが流行しています。

  また、前回も紹介しましたが、英国では今でもスーツをオーダーする場合、すべて三つ揃え(スリーピース)が基本なのです。私も以前は、すべてスリーピースで作っていました。しかし日本では真夏があまりにも暑いのでツーピースしか着ませんが、本来はスリーピースなのです。そしてスリーピースを着用する場合に股上が浅いスラックスをはくと、ベスト(英国ではウエストコートと言います)とスラックスの間から、ドレスシャツがのぞいてしまい、非常に見苦しいスタイルになります。

  クラシックスタイルにのっとって、股上の深いスラックスをはいてみてはいかがでしょうか。洗練された大人のスーツスタイルになります。

株式会社神谷ガーメント 代表取締役社長。イギリス サヴィル・ロウのキルガーフレンチ&スタンバリー(現キルガー)でチーフカッターを務め、帰国後、西武百貨店顧問デザイナーを経て、株式会社テーラー神谷(現株式会社神谷ガーメント)の社長に就任。就任後は若い人でもオーダースーツが楽しめる「ニューオーダー」の開始やNHK総合テレビ月曜ドラマ「オーダーメイド」でテーラー指導、衣装製作さらには出演など、精力的に業界の活性に尽力している。
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