ボタンは実用とアクセサリーというふたつの面をもっています。ボタンはもともと、アクセサリーとして発案されました。はじめのうちは、ボタンホールのない時代が続き、ボタンだけが服のあちこちに取りつけられていました。次に、日本の足袋のつめ形の留め具のようなボタンを引っかける細工が考案され、最終的に現代のスーツなどに見られるような、生地自体に穴を開け、そこにボタンを留める方法が考え出されました。
生地に直接穴を開けてからは、ボタン同様ボタンホールも装飾として考えられ、現代でも、ロンドンのサビルローには、穴かがりを美しく仕上げるための伝統的ハンドワークの技術が残されています。ボタンとボタンホールが装飾であれば、スーツのボタンは留めなければなりません。フロントボタンを外して許されているのは、座ったときだけなのです。
フロントボタンには、ふたつの効果があります。ボタンを留めることによりウエストまわりをすっきりさせ、脚を長く見せる効果です。ボタンを留めることによって形成させる上着の前裾のカットが、下半身のプロポーションを美しく見せてくれます。どんなスーツにも、ウエストラインに近い位置にボタンがついているのはそのためです。三つボタンのスーツは中一つ掛け、そして二つボタンのスーツは上のボタンを留めることにより、最もすばらしいプロポーションを形成します。
クラシックなスーツのボタン位置は、最初から決められています。基本的には、第一ボタンの位置は、ウエストライン上で、二つボタンの場合、そのボタン位置から10.5cmから11cm下がったところにもう一つのボタンがきます。三つボタン場合は、第二ボタン、つまりセンターボタンから同じ間隔で、上がった場合が第一ボタン、そして下がった場所が、第三ボタンの位置となります。現在はボタンの位置が、やや高い方がファッショナブルな印象になります。
袖口のボタンは、クラシックなスーツでは4個が基本です。袖口から数えて、2個までのボタンは、本物のボタンホールがついていなければなりません。本物とは穴が開いていて、フロントボタンやフラワーホール同様、丁寧なハンドワークが施されているものです。これを本開き、あるいは切羽(せっぱ)といいます。
スーツの袖口から1個目のボタンまでは、3.5cmが基本。ボタンホールを開ける理由は、手を洗う時、スーツの袖がぬれないように、そのボタンを外してたくし上げるためです。
スーツのボタンには、それぞれルールと役割があり、着こなしの良し悪しはボタンも重要になっているんですね。ボタンの留め方ひとつにも気を配った、よりスマートなスーツスタイルに挑戦してみてください。