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ヨーロピアンファッションの発展 [コンチネンタルスーツ]


  コンチネンタルスーツは、フランスのクラッシックなスタイルが基本で、丸みを持たせた肩幅を広くとり、ウエストは、ブリティッシュ・スタイルほどきつくはない程度に絞込み、裾が腰に密着するVの様なスタイルですのでいわゆるVラインと呼ばれています。


  また、一方、イタリアのスーツは、もともと、カラチーニやブリオーニの様にテーラーたちだけのもので、既製服業界が発展してきたのは、二次大戦後のことで、当時はもっぱら、フランスの既製服の下請けを行っていました。

  同じコンチネンタルスーツでもフランスとイタリアではやや異なっています。イタリアの既製服は、テーラーの時代は長かったため、ブリティッシュスーツのスタイルに加えてフランスの華やかさもとりいれています。キトンやブリオーニのスーツを見ていますと、クラシコ・スタイルの独自のラインをとりいれています。私の親友のテーラー、グイド・エスポジスト氏のお店でも、80%以上は、英国製の生地を使用して、スタイルもブリティッシュスタイルも影響を受けています。

  実は、ロンドンのサビルローのテーラーの工場には、たくさんのイタリア人が働いているのです。つまり、長い間イタリア人は、出稼ぎとしてイギリスに渡り働いてきました。イタリア人は日本人と同じで、手先が大変器用な人種なのです。現在でこそ通貨がユーロになり、急速に力をつけてきましたが、以前のイタリアのリラは経済力が弱く、イギリスのポンドやフランスのフラン、ドイツのマルクと違って、一歩イタリアから国外へ出ると換金できませんでした。つまり、世界経済から、イタリアは相手にされていませんでした。

  本当に貧しい国でしたが、彼らはマンジャーレ(食べましょう)カンターレ(歌いましょう)アモーレ(愛しましょう)と、いつも人生を楽しんでいました。昼休みも自宅へ帰って、昼食をとり、2・3時間、昼寝をしてから、働きにいっていました。さすがに、ミラノやフィレンツェでは、その生活パターンはなくなってきました。

  そして、ジョージ・アルマーニが出現してから、世界のファッションリーダーとして注目を浴び、アルマーニのスーツが時代を席巻しました。イタリアン・ファッションが、10年間も流行りました。コンチネンタルスーツの面目躍如といったところです。昨年から、若者を中心にまた、ブリティッシュスーツが流行してきていますが、今後もコンチネンタルスーツからは目が離せません。
株式会社神谷ガーメント 代表取締役社長。イギリス サヴィル・ロウのキルガーフレンチ&スタンバリー(現キルガー)でチーフカッターを務め、帰国後、西武百貨店顧問デザイナーを経て、株式会社テーラー神谷(現株式会社神谷ガーメント)の社長に就任。就任後は若い人でもオーダースーツが楽しめる「ニューオーダー」の開始やNHK総合テレビ月曜ドラマ「オーダーメイド」でテーラー指導、衣装製作さらには出演など、精力的に業界の活性に尽力している。
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