
私が担当しているこのコラムのタイトルは「ファッションコンシェルジュ」。ならばどなたかファッションで気になっていること、あるいはお困りのことについてお答えするのが、その役割だと思いますが、まだ始めたばかりですので、そんな反響もありませんが、どしどし質問なども受け付けておりますので、よろしくお願いいたします。
しかし洋服のことについて、あるいは流行のことについて、人に尋ねるのは少々気恥ずかしいものです。特に男性の場合は。女性だと、友人同士でそんな話をしたり、お店に入っても、どんなものは流行っているか、どんなものが売れているかをスタッフに尋ねたりしている人がいらっしゃいます。私も長年、ファッションに係わる仕事をやっていますが、「何を着れば、お洒落に見えますか?」なんて面と向かって聞かれたことは一度も経験はありません。
そんなある日、よく通っていた店で、仲良くなったスタッフから新しく入荷したチノーズを薦められました。色はオーソドックスなカーキ色。実はすでに何本かチノーズをその店で購入していまして、ディテールこそ違いがあるもの、私がそれまで持っていたチノーズと大差ありません。それほど頻繁に服を買えるわけではありませんでしたし、新しい商品を買うのならば、イメージを変えるような着こなしをしたいという気持ちもあり、「カーキのチノパンなら持っています!」と言うと、その人は「でも、コレは持っていないでしょう!」と。もちろん新しい商品ですから、同じチノーズなんて持っていません。さらに「毎日同じものを着ているように見えて、実は毎日違うものを着ている。コレって、そうとうお洒落なことなんじゃない」というのです。やられました。今でも、私の心に残るとってもいい言葉です。男性の場合、服を着るということは、着せ替え人形やコスプレではありませんので、毎日変わって見える、あるいは見せる必要はありません。逆にそうしない人のほうが実はお洒落に見えたりするのです。イタリアの有名デザイナー、ジョルジオ・アルマーニ氏は、いつもネイビーで全身(最近はネイビーとブラックの組み合わせも多い)をかためておりますし、いろいろな国で、いろいろなファッション関係者にあっても、だいたいがネイビーかグレーのスーツとかジャケットをきちんと着こなしています。