TOP > Culture > 自宅で体感できる、アートギャラリー > 赤い覚醒”田名綱敬一


  田名網敬一個展「DAYDREAM」が東京で行われていた。NANZUKA UNDERGROUND(渋谷)で飛び込んできたその作品群を目にした瞬間、脳内の奥底にある古い記憶を刺激し始めた。というのは、私が会社を立ち上げる前に展示企画(宇川直宏氏とのコラボレーション)でご一緒させて頂いた事もあり、当時の想い出が甦ったという感傷もあったのだが、同時に、決して時代を感じさせない、いつの時代にも最先端であるクオリティにあらためて圧倒された。



  田名網氏といえば、やはり日本版「PLAY BOY」の初代アートディレクターであったということが、私の中でのある種の「色」認識であり、サイケデリックかつエロティシズムの代名詞である。60〜70年代の作品が、という話ではなく、当時によく見られた他の方々とは一線を画していた印象が強く残っている。グラフィック的思想、立体的色彩構成、精神世界、ドラッギーな動き、全てが懐古にはならない新鮮さを常に放っている。この中毒性こそが彼の世界であり、世代が繰り返されても若者から指示される理由だろう。彼の描く世界は記憶の中に存在する深層心理、断片的に残されている点の記憶、そしてそれをひとつの理想的カタチに覆い被しつつ、表現しようと試みるも、方々から穴を空けて飛び出していくある種の「生命体」が、勝手に組み立て、ひとりでに筆が進んでいるような、そんな印象を受ける。何を言ってるんだ? と言われそうですが、脳内ヴィジュアルとしてそんなイメージ。

  全ての作品が、綿密かつ繊細に計算されて組み立てられている(ように見える)のに、私はそれを感じない。田名網氏の無意識化、とでも言いましょうか、そんな勝手な理想型を組み立てているのかもしれません。いや、もしかして、田名網氏が取り組んできた“イメージディレクター”としての手腕にやられているのか?それならそれで、弄ばれてみることにしましょう。

  今回の展示、普通に驚いたのは「印刷」ではなく「描いている」ということ。全てにおいて制作をしている。ここにきて、この進化は予想していなかった…。どうしても、赤色が私には刺激的である。そういえば、某CDショップで見たSUPER FURRY ANIMALSの新作ジャケットワークも田名網氏の新作。Pete Fowlerのイラストがシンボリックだった、このバンドのイメージをも浸食した破壊力、影響力にただただ驚くばかり。溢れでる創作欲に引き続き注目していきたい。
Agent&Creative company 代表取締役兼プロデューサー。新しい才能に目を向け、プロデュースからディレクションを業務とする。ギャラリーとは異なり展示施設を持たず、人に力を注ぐ業務展開を行い、様々な才能を輩出。作家マネジメント及びプロデュースを手掛けながら、付随する業務を全てこなす。その他に、制作部門を独立させ<diffusion.>の代表も兼任。商業施設、広告等のアートディレクション、デザインも受注し、制作物のプロデュース、プランニングまで手掛ける。 http://www.philspace.com/