糸の表現、といえばやはり刺繍が思い浮かびますが、刺繍を「刺繍じゃない」ベクトルに向けた表現で、
様々な方面から評価を得られる存在として注目の作家、姉川たく。
彼の経歴は面白く、もともと大学時代に服飾を専攻し、テキスタイルなどを学びながら、パフォーマンス活動(踊っていたそうです)に力を注ぎ、卒業後に、インテリアデザインの会社に入社。内装のプランニングやアートディレクションなど建築分野にまで首を突っ込んで仕事をしていたという目まぐるしさ。初期バブル時代、そのなかのいくつかは彼が自由な表現で手掛けた内装“作品”は、まさに泡と消えたという。
さらに、彼の興味はデジタルへと進みます。社内で部署を立ち上げ、デジタルコンテンツ業務を開始。この頃手掛けた作品が、エンターテインメント性の高い、新たな視点だと評価され、幾つもの賞を獲得。一躍話題のクリエイターとしてメディアに取り上げられるようになります。これが転換期となり、独立、デザイン会社を設立します。ここまで聞くと、一体何がやりたいのか、と不思議に感じられる方も多いと思います。おそらく、本人もそう感じた時期があったのだろうと推測しますが、「表現」する上での舞台は決めなくても、すべての表現物は「姉川たく」でしかなく、仕事としての落とし込みも「姉川たく」でしかなかった、と。純粋に、カタチにする機会を探していた結果なんだと思います。
彼の到達した表現手法である「糸」は、あまりにも身近ながら、様々な可能性に満ちていました。「シルクスクリーンで印刷した図案と刺繍とのコラージュ」と一言で片づけるものではなく、過去のテキスタイル、服飾、デジタル、空間演出、アニメーション等の経験要素が全て揃っている作品でした。その多くの情報を「糸」のみで表現したのは彼が初めてだと思います。
糸に概念や哲学を集約させることで、作品には様々な想像する余地が生まれます。
年々作品が大きくなり、シルクスクリーンという手法すらなくなりつつある(キャンバスと糸のみ)
ことに、私個人としては喜びを感じています。そうなってほしいと思っていたカタチが徐々に生まれつつあるからです。膨大な経験値としての情報がいよいよ「糸」として1本化してきたのではないか、そんな妄想です。
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Fishmans 2005 |
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Amateur 2006 *作品に映像投影 |
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curriculum2006年 糸で制作した鳥 |
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Tomorrow(L)/ today(R) 2006 |
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