切り絵作家(福井利佐)はどんな活動をしているのか、ということですが、数年前までは第一印象として、必ず「絵本」という言葉を連想されていました。でも絵本挿画は、今後やるかもしれませんが、現時点では手掛けていません。勝手な推測をすれば、「モチモチの木」の挿画を制作された滝平二郎氏に認められるレベルに達するまで、手をつけられないのかもしれません。個人的には、良いストーリーとの出会いで成立するとは思っていますが。期待しております。
それではどんな活動をしてきたのか、簡単にご紹介します。
JACA日本ビジュアルアート展特別賞を受賞(1999年)して以降、映画「黒いオルフェ」のポスター等ヴィジュアルを提供。順風満帆かに思えましたが、作風がなぜか伝わりきらずに苦しい時代を迎えます(省略します)。前回も書きましたが、「切っている」ということが伝わらないのです。グラフィックデザイン全盛の時代です。ただ、ここで彼女は重要な発言をしました。「切っていること、細かい作業を褒められることは、評価ではないんじゃないか」と。あくまで、完成した作品の見栄え、表現力で評価されたい、と。彼女の「表現の深さ」はここにあるような気がします。言い換えれば、どんな土壌だろうが、表現という世界では負けない強さを身につけたいと思っていたのかもしれません。
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Reebokのスニーカーというプロダクトとのコラボレーションも切り絵でしか出せない、繊細さ、世界観を見事に表現していましたし、東京コレクションに関わった際にも、そのプロダクト(洋服、下着)は命を授かったかのように、動いていました。
「デザイナーの技量にも勝る表現」を切り絵という手法で現代に落とし込んだ技術は、2004年に行われた初の個展で、証明されます。表現力+現物の繊細さに驚いた方々によって、福井利佐の名前がひとり歩きを始めたのです。中島美嘉さんのアルバム「MUSIC」そしてツアーグッズやパンフ、ステージ装飾に至るまで手掛けられるようになったのも、この個展がきっかけでした。NHK「トップランナー」に大抜擢されたのもこの時です。ただ、メディアの怖さを本人が認識していたので、その後制作活動に専念。自分の表現と向き合いながら、「三菱自動車 i(アイ)との試験的コラボレーション(限定1台)」や「手塚治虫キャラクターの福井利佐バージョン(UNIQROでTシャツ化)」等、切り絵とは想像のつかない数々のコラボレーション作品を仕事として生み出しています。そんな活動を見ていると、切り絵で不可能な表現はないんじゃないだろうか、と私自身(勝手に…)思えたりします。 |
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個人的な意見も交えながら、書かせて頂きましたが、デザイン的POPさ、和の美しさ、伝統と進化の融合、そして職人的技術を兼ね備えた切り絵作家、ということでご記憶頂ければ、ご紹介した甲斐があります。
今年の11月上旬には初の作品集が発売されます。今回書かせて頂いた内容はほとんど見ることができます(過去の作品メインの構成となっています)ので、是非ご覧ください。そして、来年にはオリジナルの切り絵アニメーションDVD付き作品集も出ます。こちらは福井利佐がストーリーから切り絵まですべて手掛けています。こちらも期待ですね。
あと、まだどこも出していない情報ですが、いよいよ個展が来年の3月に東京で行われます。これこそ待望の個展です。現物をご覧頂くことが一番伝わると思いますので、スケジュールが正式に発表されましたら、是非ご覧いただければと思います。場所は浅草(!)です。
構成が楽しみですね。 |
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